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プロもうなる京大スパイスカレーの味 秘伝のレシピに食品会社も興味津々

波溝康三

 日本各地のイベント会場などで長い行列ができ、プロのシェフもうなるスパイスカレーを出す人気店舗がある。料理人は京都大学の団体「京大カレー部」の部員たちだ。ただの、サークル活動だとあなどってはいけない。部員たちは真剣そのもの。スパイスを研究するために本場・インドへ“修業”へ出る部員や、「カレー部に入るために京大を受験した」という猛者もいる。日々、スパイスカレーの研究に没頭する部員たちが、新刊「京大カレー部 秘伝のスパイスカレーレシピ」(河出書房新社)を刊行。大手食品会社も注目しているという“門外不出の味”を披露した。

 「記憶力向上! 頭が良くなる吉田キャンパスカレー」といういかにも京大生らしいアカデミックなネーミングのカレーから、忙しい主婦向けの「超時短3倍速トマトカレー」。さらには、食べ歩きのグルメたちをうならせるような「ウルトラ旨味凝縮濃厚無水キーマ」など、メニューの名前だけで、その味を確かめたくなる興味津々の計50種類のレシピが、ずらりと紹介されている。

 「最初に部員全員から計100個のレシピを集め、そこからさらにアイデアを練り直し、50個まで絞っていきました」

 本のまとめ役を担当した農学部3年の三宅浩士朗さん、同じく農学部3年の三宅祥太朗さんはこう説明する。2人は双子の兄弟だ。

 現在、部員は31人。それぞれの部員が、独自の味を追求し、「自分が一番おいしい」と思う自慢のオリジナルのスパイスカレーのレシピを作り、部会に提出。部員全員で話し合いながら厳選していったという。

 カレー部へ入るために京大を受験  

 三宅浩士朗さん、祥太朗さん兄弟は福岡県生まれ。同じ地元の高校から、2人そろって京大農学部へ入学した。

 京大を受験した理由を聞くと、「京大カレー部へ入るためです」と2人は声をそろえた。

 「高校の図書館で勉強中、手にした本を読んで、京大へ行こうと決意しました」

 2人が偶然、出会った本は2017年、京大カレー部4代目部長、石崎楓さんが刊行した「京大カレー部 スパイス活動」(世界文化社)だった。

 2人とも幼い頃から料理好き。小学生のときから2人で調理を覚え、両親たちにふるまってきたという。さまざまな食材そのものに興味があったが、石崎さんの本を読んで、スパイスカレーに強く興味を覚えたのだという。

 4代目部長の石崎さんは、京大カレー部を全国区に知られる存在にまで成長させた“伝説の部長”だ。スパイスを探すためにインドを何度も訪れたり、スパイスカレーに適した米を手に入れるため、地方の農家に住み込んで田植えを教わったりしていた強者(つわもの)である。

 また、三宅兄弟の1年上の先輩で現在、文学部4年生の田村夢海さんも、2人と同様、石崎さんに憧れ、カレー部に入部し、インドへスパイス修業にも出掛けている1人だ。

 「こんなスパイスカレーを極めようとする達人のような先輩たちが大勢揃っているカレー部で研究してみたい」

 この一念で、2人は“京大カレー部一本”に志望校を絞った。京大以外は受験しなかったという。

 そして2人とも見事に現役で合格。大学入学とともに、すぐにカレー部に入部した。

 「今日から家で修業だ!」

 入部間もなく、いきなり先輩が暮らす部屋へ連れて行かれ、「スパイスの種類や名前を教わるなど、スパイスカレー作りの猛勉強をさせられました」と三宅兄弟は苦笑する。 

 京大カレー部は、サークル団体だが、ただの、“食べ歩き”のような団体ではない。

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