オーダーブックで読み解く外為市場

米経済指標に要警戒 さえない結果ならリスク回避色濃い相場に

OANDA FXラボ編集部
OANDA FXラボ編集部

 先週の為替相場は、米中対立への懸念や米連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和策、米国大統領選挙延期の可能性など、様々な要因により、引き続き米ドルが弱く、欧州通貨が強い推移となりました。円も強い推移が続きましたが、週末には本邦要人の円高牽制コメントが続いたこともあり、失速する動きとなりました。

 今週も、米中対立や新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速などのネガティブな要因に警戒が必要な状況が続きそうです。

 今週は米国で雇用統計などの重要経済指標の発表が予定されています。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状況下で、これらの経済指標が冴えない結果となってしまうと、景気減速懸念が強まり、リスク回避色が強い相場となってしまう可能性も考えられそうです。

 また、英国では、イングランド銀行(BOE)の金融政策委員会が予定されています。今後の英国の金融政策に関する手がかりが出てくるとポンドを動かす要因となるため、注意が必要です。

 ドル円は下落基調だが、もう一段の反発余地もあり

 では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。

 オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。

 ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。

 先週のドル円は、下押しが続き、金曜日には3月中旬以来の、1米ドル=104.20円付近まで下落した後、反発に転じる動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、買いポジションの比率が6割を超える状態が続いており、このうち含み損を抱えるものも多い状態です。

 このため、上昇したところでは、これらのポジションの安堵の利益確定の売り、下押ししたところでは、損切り(損失拡大を防ぐための決済)の売りが増え、上値の重い状態が続く可能性が考えられそうです。

 一方で、週末の反発により、含み損を抱えた売りポジションも増えており、反発が続くとこれらのポジションの損切りの買いが増える可能性も考えられ、もう一段の反発余地は残されているようにも見え、方向感の読みにくい状況が続く可能性も考えられそうです。

 ユーロドルは上昇基調も短期的な下押しに要注意

 先週のユーロドルは底堅い推移が続き、一時1ユーロ=1.19米ドル台まで上昇する動きとなった後、調整売りに押される動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、上昇基調が続いたことにより、含み損を抱えた売りポジションが多く、下押した場合は安堵の買い戻しが増え、高値を切り上げる場合は損切りの買いが増えることが想定され、底堅い推移が続く可能性が考えられ、上昇余地はまだ残されているように見えます。

 一方で直近の下押しにより、含み損を抱えた買いポジションも少し増えており、調整売りが続くとこれらのポジションの損切りが増え、下落を後押しする可能性が考えられ、短期的には下押しが続く可能性も考えられそうです。

 ポンドドルも短期的な下押しの可能性

  先週のポンドドルは、底堅い推移が続き、3月の高値水準の1ポンド=1.32米ドルに迫る動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、高値圏で推移しているため、含み損を抱えた売りポジションが多い状況が続いています。

このため、下押した水準では、これらのポジションの安堵の買い戻し、高値を切り上げる場面では、損切りの買いが増え、底堅い状態が続く可能性が考えられそうです。

 一方で金曜日の伸び悩みで含み損を抱えた買いポジションも少し増えており、調整売りが続くとこれらのポジションの損切りも増え、調整売りが進む可能性にも少し注意が必要な状況となりそうです。

〈OANDAのオーダーブック〉

オープンポジションはここに注目

 相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。

 これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。

 例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。

 損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。

 オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。

オープンオーダーはここに注目

 前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。

 オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。

 損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。

世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?

 トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。

 OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。

 これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。

※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。

本記事に掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。

OANDA Japan株式会社

第一種 金融商品取引業 関東財務局長 (金商) 第2137号

加入協会等:一般社団法人 金融先物取引業協会 証券業協会 日本投資者保護基金

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OANDA FXラボ編集部 OANDA Japan株式会社
世界各国に拠点を持つFXブローカー
1995年に世界で初めてインターネットを利用した無料の外国為替レート情報の提供を開始したOANDAの日本法人。創業当初から、正確で透明性の高い優れた為替レートを提供するため万全のインフラを整え、取引環境の改善を行ってきた。現在では世界8カ国にオフィスを構え、そのサービスは世界中のトレーダーに利用されている。

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