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物体内部のらせん構造の向きを識別するX線顕微鏡

 □理化学研究所 放射光科学研究センター 放射光イメージング利用システム開発チーム チームリーダー・香村芳樹

 ■物体内部のらせん構造の向きを識別するX線顕微鏡

 DNAやタンパク質中のα-ヘリックスが持つ「らせん構造」や、耐熱性に優れた次世代半導体中の「らせん転位(結晶中で格子面がらせん状に不連続になっている部分)」など、さまざまな分子や結晶にはらせん構造が多く見られる。これらの構造が、自然界にどのように誕生したのか、私たちの科学技術の進展にどう利用できるのかは、自然科学研究の大きなテーマとなっている。

 今回、理研を中心とする研究グループは、X線が透過する際に、波面が一定の角度で傾きらせん階段状になった「光渦(ひかりうず)」という光が生じることに注目し、物体内部のらせん構造の向きを識別できる「X線顕微鏡」の開発に成功した。このX線顕微鏡では、物体のらせん構造の性質を光渦の波面に転写させ、結像レンズとしてらせんフレネルゾーンプレートを用いることで、らせん構造の向きを識別する。大型放射光施設「SPring-8」における実験では、物体を通って生じたX線光渦の巻数(ある点の周りを回った回数)を求め、同時にらせん構造の位置情報を決定することに初めて成功した。

 本研究成果は、生体内のさまざまならせん構造の向きの識別・分布から、生命現象を理解する新しいツールを生むとともに、材料を特徴づけるらせん転位の識別や、分布の観察を可能にし、高性能の半導体素子や発光素子、高剛性の金属などを効率良く開発するために役立つと期待できる。

【プロフィル】香村芳樹

 こうむら・よしき 東京大学大学院理学研究科博士後期課程修了、博士(理学)。X線天文学で博士号取得。SPring-8のビームライン建設に携わり、2018年4月から現職。

 ■コメント=本研究は、特異な物理現象を引き起こす波動関数の渦を観察するのにも役立ちます。

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 □理化学研究所 環境資源科学研究センター 植物ゲノム発現研究チーム チームリーダー・関原明

 ■キャッサバ塊根の形成メカニズムを解明

 熱帯・亜熱帯地域で栽培されている「キャッサバ」は、挿し木で増殖し、根には塊根(イモ)が形成される。この塊根中で合成されるデンプンは、全世界で5~10億人の食糧源・エネルギー源となっており、キャッサバは食糧安全保障および産業利用上、重要な作物として位置づけられている。持続的な食糧生産を維持するためには、塊根が形成される過程の分子メカニズムを理解する必要がある。

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