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コロナ対策緩和、「政府追認」を専門家が警戒

 新型コロナウイルス感染症対策をめぐり、感染拡大を強く警戒する感染症専門家らの発信力が再び強まり、経済回復に軸足を置く政府とのせめぎ合いが表面化している。政府の新型コロナ対策分科会には、一進一退を繰り返す新規感染者数を横目に、政府方針の追認機関になり下がるわけにはいかないという思いもにじむ。(坂井広志)

 「菅義偉(すが・よしひで)政権の船出で微妙な判断が迫られるなあ…」。厚生労働省が18日に開いた新型コロナに関する有識者会合で、ある医療関係者は東京都が確認した同日の感染者が220人と6日ぶりに200人を超えたことについて、こうつぶやいた。

 政府は19日からイベントの入場制限を大幅に緩和。観光支援事業「Go To トラベル」の割引対象に10月1日から東京都を発着とする旅行を加える予定だ。この医療関係者が口にした「微妙な判断」という言葉には、緩和を続けてよいのかという問題意識が込められている。

 そもそも分科会メンバーの感染症専門家らの間には、経済活性化に主眼を置く政府に対し苦々しい思いがくすぶっている。

 7月16日の分科会の際、メンバーの多くは開催直前に、政府から東京を除外して予定通り同月22日から前倒しして行うことを聞いた。「寝耳に水だった」(有識者)という。不満がくすぶる中、方針は了承され、政策面で主導的役割を果たした旧専門家会議と異なり、分科会は政府の追認機関という印象を与えた。

 9月11日の分科会ではトラベル事業への東京追加方針などについて議論した。出席者によると「追加の根拠が薄い」「一斉に緩和するとリスクが高まる」など緩和に慎重な意見が相次いだ。提言には「ある都道府県がステージ3(感染急増段階)相当と判断された場合には除外することも検討してほしい」と記された。

 分科会後、ある医療関係者は提言について「7月16日の反省を込めた。10月1日から東京を追加するのは難しい」と断言。西村康稔経済再生担当相は記者会見で「10月1日からスタートすることを予定しつつ、9月下旬にかけて感染状況を見極めながら最終的に判断したい」と微妙な言い回しに終始した。

 政府内に東京追加を取りやめる動きはなく、分科会のメンバーは「東京の追加を了承したわけではない。政府が責任をもって決めたことだ」と突き放す。

 政府が専門家会議の廃止を発表した6月24日、座長を務めた脇田隆字国立感染症研究所長は日本記者クラブで会見し「前のめりになり、専門家会議が政策を決定しているような印象を与えていたのではないか」と総括している。

 専門家が分析と提言を行い、政府が責任をもって政策を決定する理想的な関係は一見築かれているように見える。しかし、どこかギクシャクした関係に陥ってしまうところに、政治と科学の共同作業の難しさがある。

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