たばこと健康

喫煙率と火災件数は相関する

 たばこが人の生命や健康を損なうのは、がんや心疾患、脳血管疾患などの慢性的な病気だけではない。昔から、たばこは火事の大きな原因のひとつとなってきた。江戸時代には、火災予防のために、たばこ禁止令が何度か出されたことがある。

 そこで、最近のたばこと火災について調べてみた。

 総務省消防庁の「令和元年(1~12月)における火災の状況」によると、昨年1年間に全国で3万7538件、群馬県では805件の火災が発生した。出火原因の第1位はたばこで3557件(9・5%)、以下、たき火2911件(7・8%)▽コンロ2890件(7・7%)▽放火2719件(7・2%)▽放火の疑い1787件(4・8%)-と続く。同年には、これらの火災で、1477人の死者、5814人の負傷者(群馬県は死者34人、負傷者117人)を出した。

 令和元年に、たばこによる火災で亡くなったのは164人で、火災死亡者の11・1%を占める。その4倍程度の負傷者が存在するため、年間およそ800人がたばこによる火災で命を失うか、何らかの傷を負う悲劇に見舞われていると推定される。

 総務省消防庁の15年分の「火災の状況」で平成16(2004)年から30(2018)年までの火災状況の変化を、厚生労働省の「最新たばこ情報」により同期間の成人男女の喫煙率の変化を調べた。その結果、たばこによる火災件数は、16年の6128件から30年には3414件に減少していた。

 この15年間の消防統計、喫煙率データを基に、16年を100として、たばこによる火災件数ならびに成人男性・成人女性の喫煙率の推移をグラフに示す。16年から30年までの15年間に、喫煙率の低下と歩調を合わせて、たばこが原因の火災件数も減少していることが明らかだ。

 喫煙率の低下は喫煙者数の減少を意味し、その結果、たばこを吸うために火を扱う機会も低下し、火災発生件数の減少につながっていると考えられる。また、火災件数の減少により火災による死傷者も減少していると考えられる。令和元年のたばこによる建物火災では、154件の火災で163人が亡くなっており、喫煙者本人以外に家族などの周囲の人も犠牲になっていることがうかがえる。これらの状況から、たばこによる火災発生件数、および火災による死傷者を減らすには、江戸幕府同様に禁煙推進が有効と考える。

 関東など太平洋側は冬から春にかけ乾燥した季節となり、火災も多くなる。今のうちに禁煙を働きかけ、少しでも喫煙者が減ると、たばこによる火災の死傷者も減るものと考える。

 改正健康増進法により、公共的空間は原則的に屋内禁煙となったが、家庭内については手がついていない。今後、住宅火災の原因となる家庭内の喫煙対策にも取り組む必要があろう。(高崎健康福祉大教授 東福寺幾夫)

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