先週の外国為替市場は、欧州を中心に新型コロナウイルスの感染者数が増加したことにより、リスク回避色の強い相場となり、米ドル買いが進んだほか、円も米ドル以外の主要通貨に対して強い推移となりました。
今週も引き続き、新型コロナウイルスの被害の状況に注目が必要なほか、米国で発表が予定されている雇用統計、ISM製造業景況指数等の経済指標にも注目したいです。
最近の傾向では、市場の米国雇用統計への注目度は以前より薄れており、市場予想と大きな乖離が発生しない限り影響は限定的となりそうですが、結果次第では反応が大きくなる可能性もあるため、警戒は必要と考えられます。
これに対し、ISM製造業景況指数は、最新の景況感を反映する経済指標となるため、最近では注目度の高い経済指標の1つであり、反応が大きくなる可能性があるため、注意したいです。
また、今週は29日に大統領候補者による討論会が予定されています。討論の内容やその後の世論調査等の変化に市場が過敏に反応し、短期的に不安定な推移となる可能性もあるため、討論会が行われている間、その後の評価等に注意が必要となりそうです。
ドル円は含み損を抱えた売りポジに注目
では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。
オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。
ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。
先週のドル円は、序盤は下値を探る動きとなったものの、その後は底堅い推移が続き、1米ドル=105円台中盤まで上昇しています。
OANDAのオープンポジションを見ると、上昇が続いたことにより、含み損を抱えた売りポジションが増えており、下押しした水準では安堵の買い戻し、高値を切り上げる動きとなった場合は、これらのポジションの損切り(損失拡大を防ぐための決済取引)の買いが増え、上昇を後押しする可能性が考えられ、上昇余地は残されているように見えます。
ユーロドルは下落基調が続くか
先週のユーロドルは、上値の重い推移が続き、1ユーロ=1.161米ドル付近まで下落する動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、下落基調が続いているため、含み損を抱えた買いポジションが増えており、反発した水準では安堵の利益確定の売り、安値を切り下げる動きとなると、これらのポジションの損切りの売りが増え、下落を後押しすることが想定され、上値の重い状態が続く可能性を見出すことができそうです。
ポンドドルは短期的には反発にも要注意
ポンドドルは下落基調が続いていますが、先週後半は1ポンド=1.267米ドル付近で下げ止まり、その後は小動きが続いています。
OANDAのオープンポジションを見ると、下落基調が続いたことにより、含み損を抱えた買いポジションが増えていましたが、直近の下げ渋りで苦しくなった売りポジションも増えており、反発に転じると、これらのポジションの損切りの買いが増え、上昇を後押しすることが想定され、短期的には反発に警戒が必要な状況と考えられそうです。
〈OANDAのオーダーブック〉
オープンポジションはここに注目
相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。
これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。
例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。
損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。
オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。
オープンオーダーはここに注目
前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。
オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。
損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。
世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?
トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。
OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。
これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。
※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。
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