妊娠・出産・育児でもらえるお金《前編》に続く後編では、「出産手当金」や「育児休業給付金」、「児童手当」についてご紹介します。まずは出産手当金から説明をしていきます。
産休中の休業手当は、産休中には受け取れない
出産手当金は、産前42日間、産後56日間を基本として受け取れる産休中の手当です。出産が予定日より早まったり、遅くなった場合は、支給日数が変動することもあります。
出産手当金の支給額は、月収(標準報酬月額)を30日で割った日額の3分の2程度。産休中は社会保険料も免除になりますので、実質的には働いているときとそれほど変わらない収入が得られます。
ちなみに標準報酬月額は、収入の幅で区切られて決められています。たとえば月収が23万円の人は、健康保険では19等級に当たります。19等級には月収23万円から25万円の人が該当し、23万円から25万円の月収の人は、標準報酬月額では24万円とみなされるわけです。この24万円を30日で割った8000円が日額となり、その3分の2程度の約5300円が1日分の出産手当金として受け取れます。5300円を98日分(産前42日+産後56日)受け取れる場合、51万9400円もの金額になります。
【出産手当金の算出方法 月収23~25万円の場合】
標準報酬月額24万円÷30日=8000円
8000円×2/3=日額5300円
日額5300円×98日=51万9400円
なお、出産手当金は非課税扱いになるため、所得税や住民税はかかりません。ただし、前年の所得によって発生している住民税は、産休中も支払いが続くことは知っておく必要があるでしょう。会社によっては産休に入る時点で、住民税をまとめて支払えるケースもあります。
産休中にはもらえなくなる給料を補ってくれる出産手当金ですが、注意点もあります。出産手当金は産休中の手当なのに、産休中には受け取れないのが一般的だということ。出産手当金の申請は産後休暇が終了してから、つまり産後57日以降に申請するルールにしている会社が多いからです。
産休終了後に申請する一般的なケースでは、出産手当金がもらえるのは、産休に入ってから4~5カ月後。産休に入っても、住宅ローンや生命保険や医療保険の保険料、前年分の所得にかかる住民税など、日常的に払っている支出は待ってくれません。出産手当金は産休中には受け取れないことを知って、産休中に支払うお金の工面の仕方を、産休に入る前に検討しておく必要があります。
出産手当金をどうしても早く受け取りたいという方は、産前と産後の出産手当金を分割して請求する方法があります。産前分の出産手当金だけ、先に申請する方法です。ただし、産前分と産後分を別々に申請できるかは勤務先次第。勤務先のOKが取れた場合のみ、産前分を早めに申請できます。
育児休業給付金は、初回の支払いが遅いケースもある
育児休業給付金は、育休中にもらえる休業手当です。支給額は、育休がスタートして180日は賃金の67%。それ以降は賃金の50%になっています(上限額と下限額の設定あり)。育休中も社会保険料は免除になり、育児休暇を取得していれば、お子さんが2歳になるまで受け取れます。
育児休業給付金は2カ月ごとに支給されるお金ですが、こちらも注意点があります。初回の支給については、時間のかかるケースがあることです。育児休業給付金の申請は、原則として勤務先がおこなってくれますが、申請期限は育児休業に入ってから4カ月目の月末までとされています。そのため、ギリギリの4カ月目で申請すると、受け取れるのは育児休業が開始してから5カ月目以降になります。2回目以降は、2カ月ごとに育児休業給付金がもらえるものの、初回の振り込みまでに時間がかかる場合は、出産手当金や貯蓄で生活費をまかなう必要があります。