■年重ねた筆者ならではの感慨
70代半ばを迎えた著者のエッセー集。各章のタイトルが「動詞」になっているのがユニークだが、いきなり『脱ぐ』から始まりドキッとさせられる。いわく、「脱ぐという行為は、ある種の解放である…」。年を重ねて窮屈さやしがらみを解き放つこともまた「脱ぐ」ことなのだろう。
『泣く』の項では、ラジオ局アナウンサー時代の男女差別をめぐる苦い思い出。そして、7年の介護の末に見送った最愛の母のこと。最後は『はじまる』だ。毎年元旦にリビングウイルを書く。「喪失」ではなく「解放」。「終わり」ではなく「はじまり」のために。(朝日新聞出版、1500円+税)