専門家に聞く「相続」のコツ

「鬼滅の刃」もし現代なら 竈門炭治郎の相続順位はどうなる?

岡野雄志
岡野雄志

 「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の観客動員数が2千万人を超えたと報じられています。観客2千万人超ということは、恐らくアニメファン以外も映画館へ足を運んだということ。かく言う私もその一人です。

 緻密な映像やよく練られたストーリーに魅了されたのはもちろんですが、相続税専門の税理士という職業柄、魅力あるキャラクターたちが戦うたびに、その生死や家族関係、さらには相続のことを思ってしまいました。

 相続は亡くなった方と遺された親族・家族の関係によって、遺産分配率が異なります。少々複雑なのですが、『鬼滅の刃』主人公・炭治郎の竈門(かまど)家を例にすると、特に平成生まれの方々にはわかりやすいのではと考えました。

■炭治郎がたびたび「俺は長男だから」と言う理由

・大正時代の家督相続制度について

 『鬼滅の刃』の時代設定は大正です。日本はまだ封建的な社会環境にありました。「大正デモクラシー」と呼ばれる民本主義の政治思想や自由主義的な風潮は高まりつつありましたが、当時、一般庶民はまだ旧民法上の家督相続制に従って暮らしていました。家督相続とは、戸籍上の「戸主」が死亡・隠居などした際、家督相続人が身分・財産のすべてを継承することです。

 家督相続人の順位は、以下のようになっていました。

1.嫡出(ちゃくしゅつ)男子

2.庶出(しょしゅつ)男子

3.嫡出女子

4.庶出女子

5.私生子(しせいし)男子

6.私生子女子

 嫡出とは正妻との間に生まれること、庶出とは妾婦・側室との間に生まれること、私生子とは婚姻関係にない男女の間に生まれる子のことです。通常は年長者の嫡出男子、つまり長男とされ、家督相続の放棄は許されませんでした。

 炭治郎が鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)に惨殺された家族へ「助けてやれなくてごめんな」と首(こうべ)を垂れるのも、「俺は長男だ……長男だ!!」と怪我の痛みに耐えるのも、家督相続という時代背景があります。父親である炭十郎はすでに亡くなっていますから、炭治郎は少年ながらすでに家長としての責任も承継していたというわけです。

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