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新型コロナ国内確認から1年 感染ペース加速の今、重要な事は

 新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認されてから15日で1年がたった。現在も第3波の流行のまっただ中にあり、収束のめどは立っていない。全国の累計感染者数は30万人を突破。厚生労働省の集計では10万人を超えたのは昨年10月31日だったが、52日後の同12月22日に20万人を超え、さらに10万人増えるのに22日しかかからず、増加ペースが加速している。

 性別の内訳は、男性が55%、女性が45%で、男性の方がやや多い。年代別では、20代が最多で全体の24%を占め、30代16%、40代15%と続いた。若年層では症状のない人も少なくない。60代以上は23%。

 3密(密閉・密集・密接)の環境で飛沫(ひまつ)感染のリスクが高く、医療機関や福祉施設、飲食店、職場など多様なクラスター(感染者集団)の発生が感染拡大の要因となっている。

 14日時点で都道府県別では、東京都の8万68人が最多。大阪府3万6434人、神奈川県3万691人、愛知県2万66人、埼玉県1万9281人と続き、大都市圏ほど感染者が多い。最も少ないのは鳥取県の170人で、次いで秋田県181人、島根県230人だった。(伊藤真呂武、三宅陽子)

 国内では昨年3月下旬からの第1波、6月下旬からの第2波を経て、11月からの第3波に直面している。第2波が完全に収まらない中で始まった第3波は感染拡大に拍車がかかり、医療現場が窮地に陥っている。11都府県に再発令された緊急事態宣言で感染者数を減少に転じられるか、正念場を迎えている。

 第1波 五輪延期

 昨年1月15日に国内で初めて新型コロナウイルスへの感染が確認されたのは、神奈川県の男性。年末年始に発生源とされる中国・武漢市に滞在し、現地で感染したとみられる。その後もしばらく中国由来のウイルスによる感染が続いた。

 3月以降は欧州由来のウイルスが持ち込まれ、全国で同時多発的にクラスター(感染者集団)が発生。第1波が押し寄せ、国内でもオーバーシュート(爆発的急増)への危機感が高まった。世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を表明し、東京五輪の延期も決まった。

 4月7日~5月25日に発令された最初の緊急事態宣言では「最低7割、極力8割」の接触削減が求められ、全国の1日当たりの新規感染者は5月25日に20人まで減った。

 第2波 GoTo

 ただ同じ頃、東京都では新宿を中心に接待を伴うホストクラブなどで感染の再拡大が進行。国立感染症研究所が行ったウイルスのゲノム(全遺伝情報)解析によると、第2波となった7月以降の感染拡大は東京都から首都圏、地方に伝播(でんぱ)したものと、大阪府から西日本へと広がったものの2系統に集約されるという。

 第1波ではPCR検査の能力不足が指摘されたが、5月中旬の1日2・2万件から8月上旬には5・2万件に拡充。結果的に若年層で無症状の感染者が多く見つかり、感染拡大につながった。全国の累計感染者は3~5月が1万6749人だったのに対し、7~9月は6万4458人と4倍近くに上った。一方で、政府は経済の立て直しに向けた動きを強化。7月には観光支援事業「Go To トラベル」が東京都を除いてスタートし、イベントの人数制限は上限5千人か収容率50%以内に緩和、9月には条件をさらに緩和した。

 第3波 異変確認

 自治体独自の緊急事態宣言などで全国の新規感染者は200人台まで抑えたが、高止まりのまま第3波に突入。都がトラベル事業に加わった後の11月以降は増加傾向が強まり、首都圏にしみ出すように感染が波及していることが明らかになり、トラベル事業の一時停止に追い込まれた。

 新規感染者は今年1月8日に7800人超と過去最多を更新。昨年12月下旬以降、英国や南アフリカなどに由来する変異ウイルスの感染者が相次いで見つかり、国内で広がった場合には、さらに感染者が爆発的に増える恐れもある。

 「大都市における感染を早急に抑制しなければ、地方での感染を抑えることも困難になる」。厚生労働省の専門家組織は今月13日、強い表現でこう提言した。

◇◇◇◇◇

 新型コロナウイルスはクラスターの発生を端緒に、地域内で急激に感染拡大するのが特徴だ。政府の分科会の分析では、歓楽街や飲食店で起きたクラスターの感染者がウイルスを家庭内に持ち運び、その後医療機関や福祉施設に広がる傾向がみられた。このため飲食店を感染抑止の「急所」と位置付け、緊急事態宣言の再発令でも時短営業などの対策に力点が置かれた。

 厚生労働省が2人以上の感染者が出たクラスター事例を集計したところ、今月12日時点で3987件が確認され、昨年10月12日時点の1601件から3カ月で約2・5倍に急増した。

 分科会メンバーの押谷仁・東北大教授は、昨年12月以降に報告があった5人以上のクラスター事例807件を分析。医療機関や福祉施設での発生が45%を占めた。飲食関連は19%で、約半数が接待を伴う飲食店だった。123件の教育施設では高校が41件と目立ち、部活動関連が11件あった。

 厚労省に助言する専門家組織は、第3波の流行要因のクラスターについて「地方都市の歓楽街に加え、会食や職場、外国人コミュニティー、大学生などの若者、医療機関や高齢者施設などにおける事例など多様化や地域への広がりがみられる」と指摘している。

 宣言の再発令では、飲食店対策以外にテレワークの徹底やイベントの人数制限も求められる。尾身茂・分科会長は「飲食店対策だけで流行は沈静化できない。人と人との接触を抑えるのが重要だ」と強調する。

日本感染症学会・舘田一博理事長に聞く

 新型コロナウイルスが冬場に急拡大したのは、気温と湿度が影響しているのだろう。ウイルスは夏場の高温の環境では死滅しやすいが、低温では生き延びやすい。冬場は湿度の低下で飛沫(ひまつ)が空気中で蒸発し、細かい粒子となって広範囲に飛散しやすくなる。

 この感染症は接触のみならず、会話による飛沫で広がるのが特徴。特に飲食を伴う会食の場が「急所」として見え始めた今、ウイルスが活発化するこの1~2月をどう乗り切るかが、今後の感染抑止対策を考える上で重要な意味を持つ。

 治療に特効薬はなく、第1波と比べ、第2波、第3波は低下したとはいえ、致死率は全体で約1~1・5%に上る。全国で1日5千~7千人の新規感染者が出れば1日50~70人以上の死者が出るという状況を誰もが重く受け止めるべきだ。

 感染力が強いとされる変異ウイルスが確認され、不安が広がっている。だが一般的に変異を繰り返す中で生き残るために広がりやすくなれば、病原性は低くなっていてもおかしくない。水際対策などに万全を期すべきだが、冷静な動向分析も必要になる。

 収束に向けてはワクチンが鍵を握る。集団免疫の獲得には人口の半数ほどの接種が必要とみられるが、有効性や副作用の有無など不明な点は多い。まずは緊急事態宣言下で新規感染者をいかに抑えられるかが重要だ。東京都で今後も2千人台の感染者が確認されるようなら、さらに強い対策、メッセージを打ち出す必要がある。(談)

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