クルマ三昧

非公開の横浜ゴムのタイヤテスト施設に“潜入” アイスバーンの制動性能を確認

木下隆之
木下隆之

 氷の温度を自在にコントロール

 「ヨコハマタイヤ」のブランドで知られる横浜ゴムが、北海道・旭川にタイヤテストコースの「冷媒装置を備えた屋内氷盤試験路面」を完成させたのは2020年11月。機密性の高い開発施設ゆえに、一般に公開されることはないその施設に潜入、テスト走行する機会を得た。

 「冷媒装置を備えた屋内氷盤試験路面」とはつまり、エアコンや冷凍機のように熱を移動させることによって冷却を促すことができる路面のことだ。路面の温度をコントロールすることで、世界のさまざまな環境を再現することができるのである。

 「冷媒装置を備えた屋内氷盤試験路面」は、旭川市街にほど近い山の中にある。横浜ゴムの北海道タイヤテストセンター(TTCH)内に設けられた。体育館のような木造の建屋に、スケートリンクのようでもあり、カーリングができそうな直線路がそれだ。冬用タイヤの氷上性能をテストする屋内氷盤試験場に、新たに全長約100メートルの氷盤路が完成したのである。低速での加速や制動では有効なデータが得られるであろう。

 最大の特徴は、氷の温度をマイナス10℃から0℃まで自在にコントロールできることだ。冷媒を活用しているから、外部の環境に左右されない。積雪や風の影響も受けない。コンディションは安定している。スタッドレスタイヤはもちろんのこと、オールシーズンタイヤの性能確認もこなせるようになったのは力強い。

 そもそもTTCHは、タイヤ事業のグローバルな拡大により、さまざまな評価が求められたことにより完成した。2015年に開業したその施設は、横浜ゴムの開発速度を早めることに成功。乗用車タイヤだけでなく、トラックやバス向けの冬用タイヤの試験施設として活用していた。

 筆者もすでにこの地を訪れ、様々なタイヤのテストを経験済みだ。90万6462平方メートルという広大に敷地には、高速走行が可能な積雪コースがあり、山間部を模したワインディングロードもある。高速からのブレーキングも可能であり、加速性能を確認することも容易だ。そんなTTCHに完成した「冷媒装置を備えた屋内氷盤試験路面」を走行するのは初めてになる。そして同時に、氷の温度によって性能が異なり、つまり、氷の温度に適した開発が求められることを実感したのだ。

 ひと口に氷と言っても、さまざまである。実際に今回、温度を変えた氷盤路を走行してみたものの、氷の温度が低い路面での制動力が格段高いことを確認しているのだ。 

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