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変異株でクラスター発生のスナック経営者「感染力恐ろしい」 心境を語る

 新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した茨城県日立市のスナック「レイ」を経営していた男性(52)が19日、産経新聞の取材に応じ、経緯や心境を語った。全国的にも確認数が少ない変異株のクラスターが起きたことを受け、男性は「感染症対策は万全を講じていた。変異株の感染力は恐ろしい」と悔しさをにじませた。(永井大輔)

 21人が変異株感染

 同店では3月下旬にクラスターが発生した。その後、茨城県衛生研究所などの調べで、変異株に感染した患者が多数を占めたことが判明。同県によると、これまでに少なくとも21人の変異株感染が分かっている。

 「レイ」を経営する男性は4月1日になって、店を任せていた店長から「スタッフ全員がPCR検査を受けることになった」と感染の発生を知らされた。翌日にはスタッフ約40人とその家族らが検査を受け、3日にうち8人の感染が判明。変異株のクラスターが発生した店として広く報道されることになった。

 「(変異株は)利用客から持ち込まれたのに、うちの店だけが悪いように扱われている」。男性は憤りを感じながら閉店も検討している。地元で20年以上続いたスナックは月250万~300万円の売り上げがあったが、男性は「これだけ(情報が)広まったら再開は無理かもしれない」とも考えており、今後の見通しは立っていない。

 可能な限り対策も…

 男性は可能な限りの感染症対策を講じていたとする。入り口で検温と手指消毒を実施し、店内には空気清浄機を設置。ドアも開放して換気も徹底していた。スタッフはマスクとフェースシールドを着用し、出勤前に検温。テーブルやカウンターにはアクリル板やビニールシートなどの間仕切りも設置していた。

 それでもクラスターを防げなかった結果に、男性は「変異株の感染力は恐ろしい」と深くうなずく。

 最も憤りを感じるのは、店がまるで変異株の発生源のように、情報が広まってしまったことだ。スタッフは地元の人間ばかりで、先に感染が判明したのは利用客だった。男性は「県の休業要請や時短要請にも全て応じ、真(しん)摯(し)に感染症対策に努めてきた。クラスターが起きたのは事実だが、日立市のスナックで変異株が生まれるわけはない。こちらばかり悪者扱いされるのは…」と悔しがる。

 スナックなどの接待を伴う飲食店でのクラスターでは、感染拡大防止のために店名を公表し、利用歴のある人に検査を呼びかけざるを得ない。だが、店側の立場からすれば、万全の対策を敷いた上での店名公表には疑問を抱きたくなるだろう。新型コロナの収束が見通せない中、飲食店の苦難も終わりが見えない。

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