まさかの法的トラブル処方箋

「妊娠中、子の肌の色懸念され」メーガン妃、衝撃の告白から「平等」を考える

上野晃
上野晃

 “ポリコレ”の風潮

 英王室の公務を昨年引退したヘンリー王子の妻で、アフリカ系の祖先を持つメーガン妃のロングインタビューが、アメリカとイギリスを中心に大問題となっています。特に、メーガン妃が長男を妊娠中に「英王室の中で人種差別的発言があった」と指摘したことに対して、さまざまな議論がメディアなどで交わされています。

 メーガン妃が言うには、王室内の誰かが、メーガン妃とヘンリー王子の間に生まれる子供の「肌の色に懸念」を示したそうで、そうしたことを王室内の誰かが実際に言ったのか、言ったとして誰が言ったのか、その発言の意図するところは何だったのかといったことについて、憶測を含めて喧々諤々(かんかんがくがく)の議論が交わされています。中には、イギリスの有名な司会者が「メーガンの言葉は何も信じない」と発言して物議を醸し、結果、この司会者は番組を降板することにまでなりました。

 最近、世界中でいわゆるポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)の風潮が盛んです。人種の平等、男女の平等をはじめとした、「平等」というスローガンが極めて強烈に前面に押し出されて多くの人々を扇動するとともに、時にさまざまな運動となって表れています。それは、より良い社会の実現のために寄与することもある反面、場合によっては不条理な圧力と化して社会全体を窮屈にしてしまう負の側面もあり得ます。

 いずれにしても、この「平等」という思想、決して今に始まったものではなく、フランス革命でのスローガン「自由、平等、博愛」からロシア革命などなど、平等を求める運動ははるか昔から行われてきました。

 今回のコラムでは、この「平等」というものについて、憲法的視点と絡めて考えてみたいと思います。

 「法の下の平等」謳う憲法14条

 わが国の憲法第14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等」であるとして、法の下の平等を謳(うた)っています。「平等」って言葉、皆さんにはどんな響きでしょう? 綺麗事のように聞こえる人も結構いるかもしれませんね。実際の世の中は不平等だらけじゃないか!って。そうなんです。平等って言っても、憲法が保障している平等は「機会の平等」であって「結果の平等」ではないんです。しかも、判例では、「合理的差別は許される」なんて言ってるんですね。

 つまり、ある程度の差別が生じることは、仕方のないことだと考えられているんです。これはよく「差別じゃなくて区別だ」なんていう言い方で説明されたりもします。合理的差別なのかどうかという点で最近話題になったのが、夫婦別姓の問題です。少し前には再婚期間制限の問題もありました。差別が合理的かどうか、つまり、理屈で説明して、多くの人が納得できるものなのかどうかという点が、ポイントとなっているのです。

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