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美術品競売 中国「埋蔵金」狙え サザビーズ、合弁会社で本土進出

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美術品競売 中国「埋蔵金」狙え サザビーズ、合弁会社で本土進出

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 美術品競売大手のサザビーズが中国本土でのビジネス強化に乗り出した。投資対象として美術品の購入意欲が強い富裕層だけでなく、膨大な裏金をかかえた共産党幹部などの特権階級を意識したもので、1日からは自社イベントとしては初めて北京でオークションを開催する。レンブラント、ピカソ、ルノワールなど巨匠たちの作品が出品され、これまでの落札額の記録が続々と更新されるのは確実とみられている。

 世界2位の市場

 1日からのオークションに備えて11月下旬、北京市内のホテルに特設されたギャラリーには競売にかけられる作品の数々が展示され、多くの中国人たちが品定めに訪れた。

 今回、最高値がつくと予測されているのは、肖像画家として名声を博したオランダのレンブラント(1606~69年)が1658年に描いた「腕を曲げた男」だ。手を腰に置き挑戦的なポーズを取る男性が描かれたこの作品は、2009年12月にロンドンで落札されるまで40年間個人所有され、露出度の少ない逸品である。4年前には2020万ポンド(当時の為替レートで約29億円)で落札されたが、今回は5000万ドル(約51億円)前後の値がつき、レンブラント作品の最高額を更新するとみられている。

 落札総額5倍に

 サザビーズのアジア地区担当責任者のパティ・ウォン氏はフランス通信(AFP)に「中国人の西洋美術品に対する購買意欲は旺盛で、この5年間で落札総額は5倍にも増えた。勢いは衰えておらず、当面、美術品オークションはチャイナマネー抜きには語れない」と述べた。欧州美術財団の調べによると、中国での美術品と古美術品の昨年の売上高は106億ユーロ(約1兆3700億円)で世界2位の市場になっている。

 サザビーズはこれまで、香港市場には進出していたが、中国本土での競売は外資だけでは参入が禁じられているため、機会がなかった。そこで、国有企業の北京歌華芸術有限公司(歌華)と10年契約で合弁会社を作り、今回の競売開催にこぎつけた。サザビーズのライバルのクリスティーズも合弁会社を立ち上げ、やはり9月に自社イベントとしては初の中国本土でのオークションを上海で催している。

 特権階級の裏金は

 中国が美術品競売市場として急成長している背景には、富裕層が増え続ける中、金持ちの究極の贅沢は美術品収集だという伝統的な意識がある。さらに最近注目されているのは、富裕層たちがビジネスを通して得たチャイナマネーだけではなく、特権階級が賄賂など裏金として得た巨額の埋蔵金だ。従来、こうしたカネは不動産投機に向かい、「影の銀行(シャドーバンキング)」と呼ばれる銀行以外の融資ルートに流れていたが、最近になって不動産の不良債権化が表面化しつつあり、裏金の新たな行き場が模索されている。このため、中国経済が失速しても、美術品競売市場に向かうカネは当分増え続けるとみられている。

 北京美術館のある学芸員は「美術品を欲しがる人は、本来芸術家だ。しかし、今の中国は違う。美術のことは何も分からなくても買い漁ろうとする。これがトレンドになっている」と話す。かつて日本のバブル期には、美術品を買い集める日本人が世界の顰蹙を買ったものだが、時は確実に流れた。

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