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芸術かカネか…ミロ作品競売で異論噴出 借金苦のポルトガル

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芸術かカネか…ミロ作品競売で異論噴出 借金苦のポルトガル

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ポルトガル・首都リスボン  ロンドンで米競売大手クリスティーズが予定していたスペインの画家、ジョアン・ミロ(1893~1983年)の作品85点のオークションが2月4日、開始の数時間前に急遽(きゅうきょ)、中止された。借金苦にあえぐポルトガル政府が、欧州経済危機で破綻し国有化された銀行から差し押さえた作品を売ろうとしたところ、「国家的な文化損失だ」などの異論が噴出。野党が起こした競売差し止め訴訟に対し、裁判所は売却を認めたが、クリスティーズの判断で取りやめになった。政府はあくまで売却する姿勢を崩しておらず、国を二分する「芸術か、カネか」の論争は止みそうもない。

 負債削減のため

 「進行中の論争によって司法的な不確定要素が生じた。これはわれわれが安全に商品を販売できないことを意味している」。クリスティーズは声明で、4、5日に行う予定だった競売の中止理由をこう説明。「われわれには、商品の法的所有権を問題なく買い手に移転する責任がある」とし、落札者にとばっちりが及びかねない現状に懸念を示した。

 英BBC放送やフランス通信(AFP)などによると、競売予定の作品には、ミロの代表作の一つで、予想落札価格が650万~1140万ドル(約6億5000万~11億4000万円)と見込まれる油彩画「女と鳥」(1968年)が含まれている。絵画のほか素描、彫刻、コラージュなどがあり、落札総額は5000万ドルに達するとみられていた。

 作品は、ポルトガルの商業銀行バンコ・ポルトゲズ・デ・ネゴシオス(BPN)が2006年に日本の収集家から購入したもの。BPNは08年にギリシャやスペイン、ポルトガルなど南欧の過剰債務国を襲った経済危機のあおりを受けて破綻。政府による国有化に伴い、作品も国有財産になった。

 政府は、経済危機の根本的な原因である国の借金を少しでも減らそうと売却を決め、クリスティーズに依頼した。

 「文化損失だ」異論噴出

 これに対し、国内の美術愛好家らが作品の国外流出を懸念して猛反対。競売中止を求める署名もネットで8800人分が集まり、野党の社会党が先月(1月)、競売の差し止め訴訟を起こしていた。裁判所は4日、保有者である政府の意向を尊重し訴えを退けたが、クリスティーズ側は混乱を嫌い、中止した。

 「クリスティーズの決定は政府(の売却決定)より明らかに合理的だ」。社会党のイネス・デ・メレイドス議員は米メディアにこう語り歓迎。首都リスボンにあるベラルド博物館のアート・ディレクター、ペドロ・ラパ氏も「国民はこれらの作品を楽しむ権利を持ち続けるべきである」と喜んだ。

 もっとも、クリスティーズは「過去に市場に出たミロのコレクションの中でも最大かつ最重要のものであり、非常に残念」と未練を示し、競売自体を断念するかどうかは明らかにしていない。

 ポルトガルのホルヘ・バレット・ザビエル文化相も「BPNが抱える40億ユーロ(約5480億円)の負債削減のためにも売却は重要事項」と表明。「作品を残したいなら誰かが対価を支払わねばならない。財政が逼迫(ひっぱく)している状況では、文化政策の優先順位は下がる」と語り、“芸術よりカネ”を強調した。(SANKEI EXPRESS (動画))

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