SankeiBiz for mobile

CICA閉幕 習首席「アジアはアジアで守る」 中国主導で安保提唱 G7対抗軸に

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

CICA閉幕 習首席「アジアはアジアで守る」 中国主導で安保提唱 G7対抗軸に

更新

中国・上海市  中国・上海で開かれていたアジア信頼醸成措置会議(CICA)の首脳会議は5月21日、各国間の対話強化などを盛り込んだ「上海宣言」を採択し、閉幕した。中国の習近平国家主席(60)は会議で「アジアの安全はアジアの人民が守らなければならない」と演説し、米国の影響力を排して自国主導の安全保障体制づくりを進める「新アジア安全観」を提唱した。先進7カ国(G7)が加盟していないCICAを利用し、米国への安全保障上の対抗軸とする中国の姿勢が浮き彫りとなった。

 習氏は演説で「いかなる国家も安全保障を独占し、他国の正当な権益を侵害することはできない」と述べ、アジア重視のリバランス(再均衡)政策を掲げる米国を牽制(けんせい)。「自らの絶対的な安全のために他国の安全を犠牲にすることは許されない」と対抗意識をあらわにした。

 また、フィリピンや日本など米国の同盟国を念頭に「第三者の軍事同盟を強化することは、地域の安全保障にとってマイナスだ」と圧力を加えた。

 さらに習氏は「アジアは運命共同体だ。CICAをアジア全体の対話の場にしよう」と権能と規模の拡大を訴え、同組織を土台にした新たな安保協力機構の創設を提案。「中国は新アジア安全観の提唱者であり実践者だ」とも述べ、自国主導の姿勢を隠さなかった。

 一方、南シナ海の領有権問題で争う東南アジア諸国や、尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐって対立する日本からの批判を意識した発言もあり、「中国は一貫して領土主権や海洋権益の争いを平和的に処理してきた」と主張した。

 首脳会議には、CICAに加盟する26カ国・地域のうち、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(61)や、核問題を抱えるイランのハッサン・ロウハニ大統領(65)ら国家元首と政府首脳計13人のほか、南シナ海での中国の石油掘削作業をめぐり大規模な反中デモが起きたベトナムからグエン・ティ・ゾアン国家副主席が出席。国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長(69)も出席した。日米はオブザーバー参加で、堀之内秀久駐中国公使が安倍晋三首相(59)の掲げる「積極的平和主義」についてスピーチした。(上海 西見由章/SANKEI EXPRESS

 ≪中国主導で安保提唱 G7対抗軸に≫

 中国の習近平国家主席は、5月21日閉幕したCICA首脳会議で、「アジアの安全はアジア人民が守らなければならない」と述べ、日米など先進7カ国(G7)抜きのアジア安全保障の枠組みとしてCICAを利用し、その主導権を握る意向を示した。CICAにG7対抗軸という役割を与え、中国による「アジア支配」の野望をあらわにした形だ。

 議長国のタイミングで

 ウクライナ問題でG7の制裁に反発するロシアのプーチン大統領や、核問題を抱えるイランのロウハニ大統領ら加盟国の首脳と20日以降、相次ぎ2国間の会談を行い、手応えを得た上での習氏の宣言だった。

 中央アジアのカザフスタンが提唱して1993年に発足し、韓国やインドなども含め現在は26カ国・地域が加盟するCICAは、首脳会談が4年に1度と存在感は薄かった。中国は今年、議長国の立場で主導権を握るタイミングを得て、CICAの性格を大きく変えた。今年から2年、議長国を務める間に、中国の思惑に沿った機構に発展させる構えだ。

 共闘求めるも温度差

 CICAに組織的な拘束力はないが、中国は経済力というアメと、ロシアとの同盟強化で軍事力というムチを誇示する「力による主導権」で、加盟国などをある程度従わせることが可能と踏んだようだ。

 ただ、国際社会には過去に培ってきたアジア安全保障の枠組みに対する挑戦とも映る。1994年に発足し現在は東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国に日米中韓露や欧州連合(EU)が参加する「ASEAN地域フォーラム」などと一線を画すことになる。

 他方で、一翼を担うはずのロシアとの“温度差”も見え隠れする。プーチン政権は北方領土問題もからめながら、エネルギー輸出で関係を拡大したい日本との全面対決は避けたい。

 対日共闘を求める中国と、そう簡単には一枚岩になれない事情はイランも同じ。米国に近いイスラエルや北大西洋条約機構(NATO)メンバーのトルコも、CICA加盟国の看板だけで中国に従うほど甘くはない。(上海 河崎真澄/SANKEI EXPRESS

 ■アジア信頼醸成措置会議(CICA) カザフスタンのナザルバエフ大統領が1992年、アジアの安全保障面で各国間の信頼醸成を目的に創設を提唱、多国間フォーラムとして翌93年、活動を始めた。首脳会議は4年に1度開かれ、今回で4回目の開催。加盟しているのは中国、ロシア、インド、韓国、ベトナムなど計26カ国・地域で、日米はオブザーバー参加。事務局はカザフスタンのアルマトイにある。(共同)

ランキング