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イランもハマスを危険視 米欧にシグナル

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イランもハマスを危険視 米欧にシグナル

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 【佐藤優の地球を斬る】

 イスラエル軍が7月17日夜(日本時間18日未明)、イスラーム原理主義過激派ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの地上攻撃を開始した。今月(7月)に入って、イスラエルとパレスチナ関係が急速に悪化し始めた。

 <イスラエル軍は17日夜、イスラム原理主義組織ハマスが支配するパレスチナ自治区ガザ地区への地上進攻を開始した。ハマスが保有するロケット弾や、ガザからイスラエルにつながる秘密トンネルなどを破壊するのが目的。ガザ境界線をはさむ軍事紛争は、発生から10日目で新たな局面を迎えた。

 イスラエルがガザへの地上作戦に乗り出したのは2009年1月以来。ガザ住民らの被害拡大は避けられそうにない。

 イスラエルのネタニヤフ首相は声明で、ハマスがエジプトが提案する停戦を拒否したことを批判し、地上部隊の派遣は「国民を守るためだ」と強調した。

 これに対し、ハマス報道官は「イスラエルが払う代償は大きい。対決の用意はできている」と述べ、徹底抗戦の構えをみせた>(7月18日MSN産経ニュース)

 奇妙なニュース

 こうした状況となる前の(7月)10日、イラン国営「イランラジオ」が奇妙なニュースを報じた。

 <シオニスト政権イスラエル軍が、原発のあるディモナ市に向けてパレスチナがミサイル2発を発射したとしました。プレスTVによりますと、ガザ地区のパレスチナ抵抗グループは、9日水曜、ガザへのイスラエルの攻撃に報復し、これらのミサイルを発射しました。イスラエルは以前、「早朝から70発以上のミサイルが入植地に着弾した」と発表していました。こうした中、イスラエルのメディアは、イスラエル軍の参謀総長がガザ地区に陸軍を配備する計画を承認したことを伝えています。イスラエル軍の参謀総長は、「パレスチナに対する圧力を拡大する」と強調しました。イスラエルのネタニヤフ首相は、8日火曜、パレスチナ人に対する軍事作戦の拡大を要請しました。イスラエルの新たな攻撃で、80名以上が死亡、女性や子どもを含む多数が負傷しました。ガザ地区は2007年からイスラエルによって封鎖されており、これにより、生活水準が下がり、失業や貧困が前例のない形で増加しています。人種差別政権イスラエルは、ガザに住む170万人のパレスチナ人の基本的権利を無視しており、これにより、住民は往来の自由を奪われ、適切な収入を伴う職業にもつけず、さらには衛生や教育設備を享受することができていません>(7月10日『イランラジオ』日本語版HP)

 「原発攻撃」世界に発信

 シーア派(12イマーム派)原理主義を国家原理とするイランは、イスラエルを敵視している。従って、報道はパレスチナ人の「正義の闘争」を支持するという基調になる。ただし、このニュースでは、ハマスがイスラエルの原発を標的としているという事実に焦点があたるような形で全世界にニュースを発信している。実に奇妙だ。

 原発を攻撃するような勢力に、国際社会の共感は集まらない。もちろんイランはそのことをわかった上で、「ハマスは危険だ」というシグナルを国際社会に送っている。イランは、スンニー派系イスラーム原理主義過激派「イラクとシリアのイスラーム国」(ISIS)が、イラクのマリキ政権(12イマーム派、同時に米国の支援も受けている)の脅威になっているという認識を強めている。

 そのような状況を背景に、ハマスについても従来のような手放しの応援ではなく、「核攻撃の危険をはらんだ危険な組織であるとイランは認識している」というシグナルを米国と西欧に送っているのだと思う。今後、ハマスに対するイランの支援が消極的になる可能性がある。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS

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