SankeiBiz for mobile

【取材最前線】イスラエル「鉄のドーム」の効用は

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

【取材最前線】イスラエル「鉄のドーム」の効用は

更新

イスラエル・首都エルサレム。イスラエル・ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区とパレスチナ自治区ガザ地区  「テルアビブに来ています」

 2月にイスラエルに出張取材した際に知り合った日本人実業家から数日前、メールが届いた。現地では、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスによるイスラエルへのロケット攻撃と、イスラエル軍によるガザへの空爆の応酬が日に日に激しさを増していた。

 この知人によれば、「1日に1回は空襲警報が鳴り、空中でロケット弾が迎撃・破壊されるたびに花火のような音が聞こえる」とのことだが、防空壕(ごう)に避難する人々の様子は「消防訓練のようなのどかさ」で、「市内はいたって普通。ホテルも観光客で7割は埋まっている」のだという。

 1948年の建国以来、イスラエルの生存権を容認しない敵対国や過激勢力に囲まれ、せめぎ合ってきた中で培われた国民的な「たくましさ」もあるだろう。同時に、この国の人々がロケット弾攻撃に涼しい態度でいられるのは、イスラエル軍が誇るミサイル防衛システム「アイアンドーム」による、「迎撃率90%以上」とされる“鉄壁”に近い防御のおかげでもある。

 思い出したのが、イスラエル訪問中に会った政府高官の一言だ。

 「ドームが重要なのは、軍事面に加え、政治的な効用があることだ」

 ハマスの攻撃でイスラエル側にも死者が出て、国内では強硬派を中心に、ガザへの地上作戦の決行を政府に求める声が強まった。しかし、2008年暮れから約3週間にわたり行われたガザ進攻作戦では、パレスチナ住民ら千人以上が死亡。細い路地が入り組んだガザでの市街戦は、民間人を巻き込む恐れが高い一方、ハマスに決定的な打撃を与えることは難しい。米国を除き、国際世論の逆風も必至だ。

 その意味で、11年からアイアンドームの配備が始まり、イスラエル側の犠牲を食い止めてきたことで、ネタニヤフ政権は今回、ハマスの挑発に乗る形で地上作戦に引きずり込まれる事態を避けつつ、次の一手を慎重に見極める時間を稼ぐことができたはずだ。

 その上でイスラエルは7月17日、ガザ進攻に踏み切った。ネタニヤフ政権にどのような成算があるかはわからないが、「熟慮」の末の決断が、さらなる流血の拡大に向かわぬよう祈らずにはいられない。(黒瀬悦成/SANKEI EXPRESS

ランキング