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目指すはいつも自己ベスト チャレンジやめない 佐藤真海
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新たな義足で今季初戦の国際大会に臨んだ佐藤真海(まみ)さん=2014年6月21日、ドイツ・首都ベルリン(本人提供)
大きなスタジアムに沸き上がるたくさんの声援、ライバルたちとの真剣勝負…。トップアスリートが集う国際大会の舞台は華やかですが、そこに出場するためのプロセスは孤独との戦いでもあります。
講演会などの回数を調整しつつ、年明けから週5日は練習を継続。拠点にしているのは、東京都江東区の夢の島競技場です。晴天だと夏の強い日差しをまともに受けます。アップで体を動かした後、走り幅跳びの砂場をトンボでならしていきます。そして、助走距離をメジャーで測り、歩数を合わせてジャンプを繰り返します。義足生活になり、この競技場で走り始めてはや10年以上が経過しました。潤沢な強化費があるわけでもなく、支援態勢が整っているわけでもありません。上司や知り合いが手伝いにきてくれる日もありますが、誰もいないときは一人で汗を流します。
今季の初戦は6月下旬でした。ベルリンで行われたグランプリシリーズ。昨春(2013年)は日本記録となる5メートル02を跳びましたが、その後は2020年東京五輪・パラリンピックの招致活動もあり、調整不足はいなめません。「まずは4メートル70くらいを目標に、そこから少しずつ距離を伸ばしていこう」。そんな思いで臨んだ大会でした。
6本の跳躍。前半の3本は守りに入ってしまいました。踏み切り板に合わせようという意識が強すぎて、視線も下に落ちていました。幅跳びで大切なことは、助走スピードを生かして高く遠くに体を持っていくことです。それなのに試合勘が戻っていないこともあって、消極的なジャンプになって苦しいスタートになりました。
収穫は、一転して良くなった後半の3本です。特に5本目は、ファウルになってしまいましたが、跳躍の姿勢は好感触でした。
今季は、昨春(2013年)に日本記録をマークした義足とは別のメーカーのものに変更しました。カーブ部分のしなる時間が短くなり、反発が強くなりました。より健常者の足の使い方に近い仕様です。
私にとって、義足を替えるということは、自分の足を替えることに等しいです。感覚がなじむまでには長い時間がかかります。切断部分の膝付近にかかる負担が大きく、炎症などにも悩まされます。靴擦れのひどい状態を思い浮かべてもらえれば想像ができると思います。そんな中で、何度も跳躍を繰り返して、自分の“足”にしていくように慣らす作業が必要です。
夏の猛暑は過酷です。膝と義足の接着部分には、衝撃を吸収するためのシリコン製のサポーターを装着するのですが、練習の合間にサポーターを取り外すと、滝のように汗がこぼれてきます。
正直に打ち明ければ、これまで使っていた義足には体も慣れていて、苦しい新たな義足が自分に合うかどうか、まだ判断がつきません。もしかしたら、昨季のものに戻す可能性もあります。でも、試すことは大切だと思っています。
チャレンジをやめれば、成長はありません。もし新しい義足にフィットできれば、さらなる記録が出せるかもしれません。より難しい選択、より高い壁を越えようとすることが、モチベーションになります。
重要な大会がなく、次のパラリンピックまでの中間年にあたる今季だからこそ、新しい試みにトライできます。新しいチャレンジを続ければ、ゴールしてしまうことがない分、限界を感じることなく取り組むことができます。目指すは常に自己ベスト。昨日の自分を少しでも越えられるよう、その探求心はやみません。(女子走り幅跳び選手 佐藤真海(まみ)/SANKEI EXPRESS)