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【清水直行のベースボールライフinNZ】一時代築いた名捕手 サトの引退に寂しさ

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【清水直行のベースボールライフinNZ】一時代築いた名捕手 サトの引退に寂しさ

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紙吹雪が舞うなか、球場内を1周する里崎智也選手=2014年9月28日、千葉県千葉市美浜区・QVCマリンフィールド(戸加里真司撮影)  この年齢になると、シーズン終了間際のニュースには寂しさがつきまとう。同年代の選手の引退ニュースが飛び込んでくるからだ。

 9月12日。ロッテ時代にバッテリーを組んでいた里崎智也選手(38)がユニホームを脱ぐことを表明した。2005年に31年ぶりの日本一の歓喜をともに味わい、翌06年には第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表にともに選ばれ、「世界一」も経験した。間違いなく、マリーンズの一時代を築いた名キャッチャーだった。

 今春に正式に現役を退くことを表明した私も6月28日に、ロッテの本拠地、千葉で引退セレモニーを催してもらった。

 この少し前に球団関係者にあいさつ回りをする中で、2軍の練習施設がある浦和球場を訪れた。実はこのとき、左膝の故障で1軍から外れてリハビリ中のサトと会った。

 午前の練習が終わった後、何となくかわしたあいさつから三塁側のベンチでの雑談は30分以上にもおよんだ。「けがの回復が遅い」「キャッチャーとして納得のいくプレーができない」。はがゆい心境を語ってくれた。

 いま振り返ってみると、そろそろ限界だということを悟っているようにも思えた。

 頼もしい攻撃的リード

 「とにかく攻めてきてくださいね」。サトのリードをひと言でいえば、攻撃的だ。

 打つ気が満々の外国人打者でもない限り、彼はとにかく初球にストライクを求めてきた。見逃しでも、空振りでも、ファウルを打たせてもいい。とにかくストライク先行こそが、打者を打ち取る有効な選択であることを信条にしていたと感じた。

 捕手というのは、球の受け手。投手が逃げの姿勢だとどうしようもないというのが、彼の持論だった。マウンド上での強い気持ちは打者にも伝わる。だから、初球から攻めていく。様子を見るために最初から外す意図でのボール球のサインはあまり多くなかったと記憶している。

 もう一つは、相手の苦手なコースを徹底して攻めた点だ。変化球にタイミングが合っていないとか、打撃フォームを崩していて内角が打てそうにないと踏めば、同じ球種やコースを続けて要求してくることが多かった。投手からすれば、同じ球種を続けるのに慎重になることもあるが、それだけ投手の球を信じてくれているのだとマウンドから頼もしさを感じた。

 チームも成長、日本一

 もちろん、いいときばかりではない。打たれたときには、ロッカーで激しく言い争ったこともあった。「投手は状況によって不安にもなる。そのときどきの投手心理をもう少し理解してほしい!」。「そこを克服するのもプロじゃないですか!」。お互いに一歩も引かず、距離を置いた時期もあった。周囲にどう映ったかはわからないが、自分としては、そのことも試合に勝つためだと考えていた。

 入団当初のサトは、キャッチングの課題など自らの技術を向上させることだけで必死だった。ワンバウンドになった投球をどう後逸せずに体で止めるかということで頭の中がいっぱい。配球面は二の次といった印象だった。

 それが、04年シーズンあたりから、投手との会話が増えた。リード面への意識が高くなり、コミュニケーションを図れるようになったのだ。捕手が育てば、チームも強くなる。

 投手では、私や渡辺俊介投手、今季限りで引退表明した小林宏之投手らが先発ローテーションを守り、「YFK」と呼ばれた薮田安彦さん、藤田宗一さん、小林雅英さんらの救援陣が盤石だった。野手でも、ベテランの堀幸一さんたちに加え、私と同学年の福浦和也選手や1つ下のサブロー選手、さらに若手の西岡剛選手や今江敏晃選手も台頭してきた。

 05年の日本一はそんなチームがうまく流れに乗って、手にしたものだった。対戦相手だった阪神が今季、あのとき以来の日本シリーズへ進出したことで、当時の記憶もよみがえってきた。そんな年に私もサトも引退をすることになった。これも、運命の巡り合わせかもしれない。(ニュージーランド野球連盟 清水直行/SANKEI EXPRESS

 ■しみず・なおゆき 1975年11月24日生まれ、?38歳。京都市出身。東芝府中を経て、99年千葉ロッテ入団。2002年から5年連続2桁勝利を挙げるなどエースとして活躍し05年の日本一に貢献した。10年から横浜DeNA。通算105勝。アテネ五輪、第1回ワールド・ベースボール・クラシックで日本代表。今年からニュージーランド野球連盟のゼネラルマネジャー補佐兼代表統括コーチを務める。

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