ニュースカテゴリ:EX CONTENTSエンタメ
【私のおしゃれ学】歌舞伎俳優 中村歌昇さん 舞台でないと自分を出せない
更新
歌舞伎俳優、中村歌昇さん。[衣裳協力]gotairiku:スーツ9万2880円、ベスト2万7000円、ネクタイ1万5120円、チーフ4104円=2014年11月6日(大石一男さん撮影) 「夏の力士役へ向けて、体重を12キロ増やした。お客さんからよく見えるよう、舞台で顔を大きく見せたかったから」
歌舞伎俳優の若手の中でも、誠実な演技で目を引く25歳。6月末から7月にかけて行われた全国巡業公演「松竹大歌舞伎」まで、春ごろから1日4食、炭水化物をもりもりと食べた。4月のある日の昼食は-。
「うどん1玉、カレーライス1人前、牛丼を1杯。それにコロッケと天ぷらを付けました」
本物の力士と見まがう食べっぷりで、7月、東京、静岡、愛知など16都道府県へ巡業。「双蝶々曲輪(ふたつちょうちょうくるわ)日記」の舞台に立った。父が三代目中村又五郎の名を継ぎ、自身も父から歌昇の名を受けて四代目となった同時襲名披露興行。1カ月ごとに演目が変わる歌舞伎の世界で、体重を増やす特別な準備は「襲名にかける思いが強かった。400年の歴史で練りあげられたものを守りつつも、時代に合わせ、皆さんに楽しんでもらえる歌舞伎を担いたい」。
さて、食欲の秋。実りの季節に、食べるのをこらえた減量も見事だ。体力を維持しつつ元の体重へ。「水分はきちんと摂取し、人間、水分だけで生活できると実感しました」
そう言って笑う謙虚な青年の視線は、すでに来年1月の「新春浅草歌舞伎」を見据えている。浅草歌舞伎といえば若手俳優の登竜門。「世代交代の新鮮さ、先輩が過去に演じてこられた浅草歌舞伎の残像と戦う新世代を、ぜひ見てほしい。力及ばなくても必死に張り合いたい」
次のお役は、平清盛の側室だった常盤御前(ときわごぜん)を妻にもらい受けて喜び、曲舞にうつつをぬかし阿呆(あほう)と噂されていた『一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)』一條大蔵長成。
「大蔵卿は20年間も本性を隠し、隙を全く見せず、阿呆を演じ続けた。平家全盛の時代、一門の目を欺き、源氏再興の機が熟すまで待ち、宝を守った」
現代の世に通じるのは-。
「自分の信念を曲げず、貫いた。阿呆のふりをし続け、常盤御前を守り通した。位が高いゆえ守ることができる、守るためならバカにされてもいい、と。信じられない強さだ」
大蔵卿を演じることは、「使命感がある。幸せなことと感謝しています」と力がこもる。「自分を出すのが苦手で、舞台でないと自分を出せない。天職だと感じています」とも。
平成26年は公私ともにめでたい話題が続いた。11月、父、中村又五郎さん(58)が紫綬褒章を受章。それに先立ち、自らも婚約を発表した。来春に披露宴を行う箏曲家、萩岡信乃さんは姉さん女房で3歳年上。「今後いろいろな役をやらせてもらうのに、もちろん独りもいいが、家庭を持つというのは、新しいものを与えてくれると感じました」「しっかりした女性で、一緒にいて落ち着きます」
日本の繊細な物作りと5つの大陸の粋をミックスした「五大陸」のスーツは、落ち着いた色使いにネクタイやチーフで華やかさを出した。「スーツをまとうとぐっと大人になった気がする。スーツって奥が深い」
魂の中から沸き立つものを大切に仕立てられたスーツが気に入って、最近、ふだんも着る機会が増えたという。(文:牛田久美/撮影:フォトグラファー 大石一男/SANKEI EXPRESS)
スタイリスト:手塚陽介
ヘアメーク:山口公一(SLANG)
問い合わせ先
オンワード樫山 お客様相談室(電)03・5476・5811
五大陸ウエブサイト www.onward.co.jp/gotairiku/
■『新春浅草歌舞伎』公演日程 2015年1月2~26日浅草公会堂(東京都台東区)。第1部:11時開演、第2部:15時開演。2014年11月12日は第1部のみ休演。問い合わせ:チケットホン松竹 (電)0570・000・489