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JR東海、京都のリニア誘致に辟易 “上から目線”の要望に「えっ?」

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JR東海、京都のリニア誘致に辟易 “上から目線”の要望に「えっ?」

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京都府などが公表したリニア中央新幹線のルート案と試算の比較。京都は京都駅を通る北ルートが最適と主張。折衷案として京都府南部を通る直線ルートも示した。国が定めた整備計画に基づくのは、奈良駅付近を通る南ルート  平成57(2045)年の開通が予定されているリニア中央新幹線の大阪-名古屋ルートをめぐり、「京都経由」を求める一部の声に対し、建設主体のJR東海などが反発を強めている。

 国が23年に決定した整備計画では名古屋以西のルートは「奈良市付近」を通って大阪市まで結ぶことになっており、京都は想定されていない。JR東海の山田佳臣社長は「われわれに求めるのは筋違い」とバッサリ。京都の誘致活動は“独り相撲”に終わってしまうのか…。

 今になって言うんですか…?

 「ああそうですか、ということだけ」

 7月10日、JR東海の山田社長は大阪市内での記者会見で、リニア中間駅の“京都誘致運動”に対し、辟易(へきえき)した表情でこう突き放した。

 リニアをめぐっては、昭和48年の基本計画、平成23年5月の整備計画で「奈良市付近」を通るとされている。

 同年11月には中間駅の建設費についてJR東海が全額負担する方針を示した。

 山田社長は「リニア新幹線は国から当社が建設主体となるよう指名され、それに基づき全額負担を決めた」と強調。

 これに対し、京都府などが、ルートを見直すべきとする提言をまとめたのは、24年2月だ。

 京都府と京都市、京都商工会議所がつくった「明日の京都の高速鉄道検討委員会」が、京都駅経由ルートの経済波及効果を年間約690億円と試算。整備計画に盛り込まれた奈良市付近ルートを約40億円上回ることをアピールしたのだ。

 山田社長は困惑気味。

 「今さら『えっ?』という感じだった」

 四面楚歌(しめんそか)でもへこたれない京都

 整備計画で定められたルートには「奈良市付近」が含まれている。

 古都同士とあって京都と奈良は何かと比較されるが、奈良サイドからは「中間駅建設をJR東海が自己負担すると言い始めてから名乗り出るとは厚かましい」と京都の動きを厳しく批判する声も上がった。

 太田昭宏国土交通相も今年6月、「奈良市付近を通過する現在の整備計画通りに手続きを進めることが現時点では適当だ」との見解を示した。

 “四面楚歌”の京都だが、山田啓二知事は7月12日の会見で、「リニアは日本全体の成長や発展の原動力になるもの。JR東海には国として何がいいのかを考えてもらいたい」と“挑発”。千年以上も首都であり続けたプライドの高さからか、“上から目線”の要望になった。

 強気の京都の根拠は

 京都の強気のよりどころは、東海道新幹線で「ひかり停車」を勝ち取った成功体験にあるとみる向きもある。

 同新幹線が開通する前の昭和39年、「『ひかり』は京都に止めない」とされていたが、地元の財界人らが「京都に停車しても東京-大阪間の3時間を維持できる」と計算し、旧国鉄に掛け合って停車を実現させた。

 ただ京都駅に中間駅を設置すると、建設費は、奈良市付近ルートより2800億円余計にかかるという。4年程度でペイする計算だが、奈良を通る方が負担が少なく、経済効果も「さほど変わらない」と考えるのが妥当だろう。

 「防災上、ほとんど意味がない」

 京都の身内からは「遅きに失した」という声も漏れる。

 平成39年開業を目指す東京-名古屋間の着工は来年度に迫る。京都の関係者は、名古屋-大阪間のルートについて、「東京-名古屋間の着工までが事実上のタイムリミットだろう」と打ち明けるが、既に地質調査などは終わっており、「もう変更は難しい」との指摘も。

 そもそも、リニアは、大災害時に東海道新幹線の代替交通手段としての役割も期待されている。

 大阪-京都間を新幹線とリニアが並走しても「防災上、ほとんど意味がない」(業界関係者)。古都の“我田引鉄”はどこまで支持を得られるのか。(中村智隆)

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