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【論風】学校法人城西大学特任教授・土居征夫 新成長戦略への期待

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【論風】学校法人城西大学特任教授・土居征夫 新成長戦略への期待

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 ■粘り強いフォローアップ体制

 安倍晋三政権の経済戦略「アベノミクス」の第1と第2の矢は、一応の成果を残した。問題は第3の矢だ。少子高齢化など構造的課題は潜在成長率の頭を抑えており、岩盤規制の撤廃など経済の基盤的条件が改革されないと、インフレ目標を超える名目成長率の達成は不可能になる。

 ◆実現への意思と仕掛け

 第3の矢、すなわち新成長戦略は日本の潜在成長率を高め、長期的な成長過程を実現できるのか。

 先の臨時国会は、「特定秘密保護法国会」になってしまったが、産業競争力強化法や国家戦略特区法など一連の成長戦略関連の法案も成立し、着実に手は打たれつつある。

 そもそも安倍首相の頭には、制度やプラン作りだけではだめで、実行・実現こそ重要との思いがあるようだ。

 教育再生についても、これまで何度もプランは示されたが、多くの提言は実現していない。そのために、第2次安倍内閣では、教育再生会議の復活ではなく、教育再生実行会議と銘打って、現場での施策の実現を強調した。

 新成長戦略のプラン自体は昨年6月に「日本再興戦略」として策定されている。問題は、その具体化への仕掛けであったが、その一つが産業競争力強化法として姿を現した。その骨子は、5年間を施策の集中実施期間と位置づけ、確実に実行すべき当面3年間の実施計画を作って毎年見直しを行うというフォローアップ体制を確立したことである。

 施策については、岩盤規制を突破するために、「企業実証特例制度」などを導入した。この制度は、企業が新事業を推進する上で支障となる規制に関して特例措置を提案し、国が迅速にその実現を図る仕掛けである。戦後、ヤマト運輸の小倉昌男社長は道路運送法など国の硬直的な制度にたった一人で挑戦して、物流効率化に大きく貢献する宅急便事業を確立した。企業実証特例制度は、このような企業の主体的な挑戦を国が支援し、岩盤規制を突破する新しい事業群が澎湃(ほうはい)として生起する事態を目指すものともいえる。

 毎年見直しを行い、施策全体の手直しを進めるフォローアップ体制も重要だ。薬品販売について対面販売がネットによる文書での注意喚起より有効だとする行政の判断には、納得できない人が多いと思う。国民の安全は重要な課題だが、規制と自己責任のバランスが世界標準から離れていないか危惧される。ただ、この問題に反発して産業競争力会議委員の辞任を表明した楽天の三木谷浩史氏が、安倍総理と面談したあと撤回したことは良かったと思う。なぜなら、今後毎年の政策見直しで、実行上必要な施策は何度も実現する機会が担保されているからだ。

 国家戦略特区法では、首相を長とする特区諮問会議の創設が決まった。一部のマスコミは、現時点での規制改革の提案が小粒だと批判しているが、今後この仕組みにより新たな提案がなされ継続的に岩盤規制を潰していく仕組みができたことは高く評価されるのではないか。このように新成長戦略には、実現への強い決意と、粘り強く実行を迫る仕掛けが包含されている点に着目すべきである。

 ◆制度改革も進展

 新成長に向けて税制など制度改革もいろいろと進展している。産業の新陳代謝に向けたベンチャー投資や事業再編の促進、企業の生産性向上や従業員の賃金上昇・消費拡大のための税制措置、復興特別法人税の前倒し廃止など法人税負担の軽減も決定された。

 近く合意が予定されている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)も、国内改革への起爆剤として、また、産業のグローバル化と国際競争力強化へのインフラとして、大きく貢献すると期待される。

 農業・酪農の現場での変革や医療・看護・介護現場の変革もまた水面下で進みつつある。中央での岩盤規制の攻防戦の裏で現場の動きは急であり、数年を経ずして改革が一挙に進むことも夢ではない。

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【プロフィル】土居征夫

 どい・ゆきお 東大法卒。1965年通商産業省(現経済産業省)入省。生活産業局長を経て94年に退官。商工中金理事、NEC常務を経て、2004年企業活力研究所理事長、11年7月から現職。71歳。東京都出身。

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