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【主張】与党税制大綱 改革の先送りは許されぬ

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【主張】与党税制大綱 改革の先送りは許されぬ

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 自民、公明両党の与党税制改正大綱がほぼ固まった。来年10月の消費税増税に合わせて自動車や住宅の減税を拡大するなど、増税による景気の落ち込みを防ぐ対策に重点が置かれた。

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 来年の増税では食料品などの消費税率を据え置く軽減税率が初めて導入される。複数の異なる税率の商品が店頭に並び、小売店の現場では混乱も予想される。

 政府が検討を進めているポイント還元などを含め、対策の周知徹底が欠かせない。

 ただ、税制改正が目先の増税対策ばかりに目が向き、所得税や地方税などで抜本的な改革が見送られたのは残念だ。今後は格差是正に向け、金融課税のあり方などに踏み込んだ骨太の改革論議を急がねばならない。

 自動車を持つ人に毎年かかる自動車税は、最大年4500円減税する。購入時に支払う税負担も増税後1年に限って軽減する。いずれも増税後に購入した車両を対象とする。一方で減税財源を確保するためにエコカー減税の一部を縮小する。自動車税制は、さらに複雑化することになる。

 大綱では今後の課題として、保有から走行距離に応じた車両課税体系に改める方針も盛り込む。日本は海外に比べて自動車の保有にかかる税金が高いと指摘されている。利用実態に応じて負担を求めるなど、透明性のある税体系に見直す必要がある。

 その他の税項目でも多くの課題を積み残した。所得税の累進課税と異なり、株式売却益や配当などに対する課税はその額にかかわらず一律で約20%だ。人生100年時代を迎え、個人の長期投資による資産形成は重要だが、短期的な売買に対する課税強化などは検討してほしい。

 資産課税も見直しが問われている。相続税は強化されて課税対象が拡大されたが、その効果を検証しつつ、富裕層への一段の課税強化なども議論を深めるべきだ。所得再分配機能の回復を通じて格差是正につなげたい。

 地方税の抜本改革も見送られた。企業が都道府県に納める法人事業税をめぐり、東京都から地方への配分の増額が決まったが、その過程は不透明だ。都民には、それだけ自分たちの財源が減ることを意味する。消費税の地方配分を含めて地方財政全体の制度設計から見直すべきだろう。

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