論風

サイバー強国イランの地政学リスク 危機管理、エネルギー安保急務

 「セブン・シスターズ」といえば、1960年代石油輸出国機構(OPEC)主導以前の石油市場での国際石油資本(メジャー)7社を思い出す方も多いと思うが、最近サイバーの分野で、その攻撃能力の高い米国、中国、英国、ロシア、イスラエル、北朝鮮、そしてイランが、サイバー強国としてそう呼ばれている。(日本危機管理学会会長・国際社会経済研究所上席研究員 原田泉)

 歴史ある親密国

 イランと日本の関係は古い。奈良時代天平年間に日本を訪問したペルシャ人のことが、勅撰史書『続日本紀』に記載されている。近代では、今年がちょうど両国外交関係樹立90周年に当たる。イランは親日国としても知られており、本年6月12~14日には安倍首相が、同国の最高指導部と会談し、米国とイランの関係悪化が続く中、両国の緊張緩和を働きかけた。

 一方、近年のイランのICT(情報通信技術)分野の進展は目覚ましい。ビジネス面でも学術面でも国家的に促進を図り、大学教育の充実、女性の進出も際立っている。特に2015年の米英独仏中露との核合意、翌年の経済制裁解除以降は、イラン経済は大きく成長し、この分野も急速に発展している。テヘランの街中では、日本と変わらず、スマートフォンを片手に歩く若者の姿は一般的で、ここ数年でさまざまなアプリ・サービスが登場している。デリバリーサービスやネットショッピングなども多く、タクシー配車アプリの「Snapp」は14年の登場以来、現在では18都市でサービスを提供し、ユーザー数が約1000万人にも上っているとされる。また、政府の第6次五ヵ年計画(17年~21年)で最も注力する分野の一つとして掲げられ、日本の協力への期待は大きく、人材交流を含む何らかの交流を進める必要があろう。

 そのような中、米国とイランの間ではサイバー攻撃が繰り返されている。09年から10年にかけて、米国とイスラエルの開発したコンピューターウイルス「スタックスネット」がイランの核施設を破壊したことは有名である。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング