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中国減速、日本の景気直撃 貿易赤字拡大…中東情勢リスクも浮上

 財務省が発表した2019年分の貿易収支が2年連続の赤字となったのは、米中貿易戦争による中国経済の減速を受け、中国向けを中心に輸出が減ったことが大きい。輸出の減少は製造業の業績悪化を通じて企業活動の低迷や家計の圧迫につながり、日本の景気を後退させかねない。海外では、米国とイランの対立など新たな火種も生まれており、今後もリスクへの目配りが必要となる。

 19年の中国向け輸出では、自動車部品が前年比21.1%減となったほか、スマートフォン向け半導体などの製造装置が16.6%減、同じくスマホ向け半導体などの電子部品が10.6%減となった。中国経済が減速した影響が色濃く出た格好だ。

 日本からの国別の輸出額は、中国が米国に次ぎ2番目に多いこともあり、対中輸出が減ることの日本経済への影響は大きい。日本企業の業績や設備投資の低迷、株安、賃金の伸びの鈍化や雇用悪化などを通じて個人消費は冷え、日本経済全体の成長が下押しされる恐れがある。

 もっとも、米中摩擦に関しては、米中両政府が今月15日、貿易交渉をめぐる「第1段階」の合意文書に署名したことで“一服感”が出ている。

 代わってリスクとして浮上しているのが、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したことをきっかけに緊張度が増した中東情勢だ。

 農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「今後、中東情勢がさらに緊迫すれば原油価格が上昇し、石油製品の値上がりなどを通じて日本経済の打撃となりかねない」と警告する。

 日本固有のイベントとしては今年6月、消費税増税への景気対策としてのポイント還元策が終わり、秋以降は東京五輪関連の需要もなくなる。今年の終わりにかけて景気が後退しないよう、十分注意する必要がある。(山口暢彦)

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