経済インサイド

政権が重用の経産省、コロナ対策で正念場「何をしても批判される」

 安倍晋三政権で重用されてきた経済産業省が、新型コロナウイルス対策の実行で正念場を迎えている。当初予算の規模が約1兆2000億円の同省だが、持続化給付金、観光などの需要喚起策、家賃支援給付金と総額8兆円の看板政策に関わり、“戦線”の拡大が際立つ。給付金の委託では、具体的な不正が明らかになっていないにも関わらず、情報開示への意識の低さがあだとなり、厳しく攻め立てられた。その結果、新型コロナ対策は遅れが目立っており、経産省だけでなく、同省に頼ってきた政府全体の実行力も問われている。

 「何をしても批判される状況だ」。経産省幹部はため息をつく。足元の約1カ月間、同省は国会の内外で野党から“集中砲火”を浴び、厳しい論調の記事も相次いだ。きっかけは、5月28日発売の週刊文春が掲載した「持続化給付金を受注したのは“幽霊法人”だった」という記事だ。

 電通、人材派遣のパソナ、ITサービスのトランスコスモスの3社が平成28年に設立した一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」が国から769億円で事業を受託し、749億円で電通に再委託していたことがわかると、野党は色めきだった。政府は委託・再委託の差額20億円のうち、15.6億円は給付金の振込手数料などとする内訳を公表。再委託を含む運営体制を「コンソーシアム(共同事業体)」(梶山弘志経産相)として、電子申請のシステム構築や審査、対面で申請を支援する会場の設置など、多岐に渡る業務を分担していると説明したが、野党は耳を貸さなかった。

 協議会が決算公告をしていなかったことも問題視され、幹部は会見で謝罪した。非上場の法人の大半は公告をしておらず、罰則も適用されたことがないようだが、国の事業を受託しているだけに脇の甘さを突かれた。また、週刊文春は前田泰弘中小企業庁長官と電通出身の協議会幹部との親密ぶりを報道。米国でのパーティーで同席したというだけだったが、野党は国会で前田氏本人を追及した。梶山氏が「(前田氏は)軽率だった」と答弁せざるを得なかった。

 給付金の委託の状況が野党に問題視されていた中、需要喚起策「Go To キャンペーン」を受託して事業を行う民間事業者の募集が始まった。だが、事務委託費が給付金の4倍に相当する3095億円という巨額であることが明らかになり、批判が集中した。

 一括で募集していたのは経産省。キャンペーンの柱となる観光業を所管する国土交通省は経産省の主導に難色を示していたが、押し切られたようだ。経産省は4月中旬、省内に「官民一体需要喚起推進室」を設置するなど、並々ならぬ力の入れようだったが、野党の追及が委託事業全般に広がると、梶山氏は事態の収拾に向け、“分割”を決断。観光は国交省、飲食店は農林水産省、イベントと商店街は経産省が支援することになった。募集をいったん停止したことで、7月下旬を予定していたスタートは遅れた。各分野で開始時期は異なるが、観光は夏休みに間に合わなければ支援の効果が小さくなる。また、遅れるほど、キャンペーン開始を待つ消費者の買い控えの影響も深刻になりそうだ。

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