海外情勢

救命士派遣し自宅で救急診療 米新興企業が試行、低所得者層を主体

 米国で臨床診療とオンライン診療の間を埋め、自宅で実際の救急診療を受けられる新しい診療モデルが試みられている。新型コロナウイルス感染拡大で医療体制の逼迫(ひっぱく)度合いが強まっているものの、救急外来のうち少なくとも30%はコロナ以前でも必要のない受診だった。患者も緊急性が低ければ長時間待たされ、高額な医療費を請求されることが多い。

 コロナで事業に拍車

 「準備が整った」という意味を社名としたスタートアップ「レディー」は、1カ月当たりの患者宅への出動件数が1万5000件、新型コロナの検査は1万件を超える。連絡を受けると、レスポンダーと呼ばれる救急救命士(EMT)やより高度な技術を持つ特別救急医療士を利用者の自宅に迅速に派遣する。

 レスポンダーはタブレット端末で医師と連携しバイタルサイン(体温、血圧、脈拍、呼吸数などの生命兆候)のチェック、診断、処方を行い、必要な場合は最寄りの救急救命室と連絡を取る。ターゲットは出動件数の約半数を占める低所得者向け公的医療保険(メディケイド)加入者で、富裕層ではない。

 同社は直近の資金調達で、グーグルの親会社、アルファベットのベンチャーキャピタル部門、GVなどから5400万ドル(約56億9500万円)の資金を得て、評価額は3億5400万ドルに達した。

 レディーはこれまでに、医療関連企業に投資するディアフィールド・マネジメントや、オバマ前政権下のメディケア・メディケイドサービスセンターで采配を振るったアンディ・スラビット氏が設立したタウンホールベンチャーズなどの支援を受けている。

 レディーの事業モデルは、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)を機に認められ、資金と人材が集まり事業拡大に拍車がかかった。同社役員のジュリアン・ハリス氏は「病院での応急処置を患者宅で行おうという動きが既に始まっていたが、新型コロナによって加速した」と語る。

 ルイジアナ州最大の非営利病院運営組織、オクスナー・ヘルスシステムは、感染検査や症状のある患者の診療、退院後の診療などの委託に加え、内部での解決が難しかった救急外来の不要な受診の削減を、コロナ禍以前からレディーに依頼。2018年には、重症度で治療の優先度を決定するトリアージのプラットフォームにレディーの医療サービスを組み込み、レスポンダーがオクスナーの初診患者の自宅に直接向かうことを可能にした。また、レディーはオクスナーの救急救命室を頻繁に利用する低所得者に向けた予約制の地域医療プログラムも作成した。

 医療費は150ドルから

 オクスナーで在宅と急性期後医療部門を統括するハリー・リース・Jr氏は「レディーに委託し、18年6月から19年12月までで緊急性のない救急外来の受診は70%減少した」という。

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