国内

首相、感染拡大でも記者会見開かず 前首相と対照的

 新型コロナウイルスの新規感染者数が増え続ける中で、菅義偉(すが・よしひで)首相の情報発信に消極的な姿勢が目立っている。国民の不安や疑問に応える情報発信は政府トップの役割の一つ。感染状況が悪化した11月以降、首相は記者団のぶら下がり取材には応じるものの、記者会見は開いていない。

 首相は20日の参院本会議で、新型コロナで打撃を受けた業界を支援する「Go To キャンペーン」に関し、「感染対策と経済の回復の両立が基本的な考え方だ」と説明。観光支援事業「Go To トラベル」については「これまでに4000万人が利用しているが、判明した感染者は176人だ」と述べ、事業と感染拡大の因果関係を否定した。

 加藤勝信官房長官は20日の記者会見で、首相は政府の対策本部や国会、記者団へのぶら下がり取材などを通じて十分に説明していると強調した。内閣記者会の首相のインタビューはこれまでに2回行われており、この時には新型コロナではなく日本学術会議の人事に質問が集中した。

 ただ、首相が日米電話首脳会談後などに受けたぶら下がり取材計21回のうち、主に新型コロナに関して言及したのは、感染拡大の傾向が顕著になってからも、11月13、19両日の2回にとどまる。安倍晋三前首相が2月末から4カ月足らずの間に計9回の記者会見で国民に協力を呼びかけたのとは対照的だ。

 国内の新規感染者が初めて2000人超となった18日も、首相は官邸で田村憲久厚生労働相らに「緊張感を持って感染防止に対応していこう」と指示した。だが、首相の言葉を記者団に明かしたのは首相自身ではなく田村氏だった。

 首相は安倍政権で約7年9カ月、政府のスポークスマンである官房長官として毎日のように記者会見に臨んできた。北朝鮮の弾道ミサイル発射、台風や地震といった自然災害の発生の際には、官邸に駆けつけて記者会見を行う危機管理対応も高く評価された首相にとって、会見で国民に呼びかけるのは苦にはならないはずだ。

 首相の心境について、周辺は「記者会見で丁々発止のやり取りとなれば、強気の姿勢が国民の反発を招いてしまうと自覚しているからだろう」と推察した。(千田恒弥、田中将徳)

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