株価・外為

NY株3万ドル超、ワクチン開発で投資家強気に 過熱相場の危うさも

 【ワシントン=塩原永久】ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均が初めて3万ドルを超えた背景には、新型コロナウイルスのワクチン開発が進展し、投資家が景気の先行きについて強気な見方に傾いていることがある。だが、全米で新型コロナ流行が再加速しており、悪化した雇用水準が長引く懸念も根強く、経済実態にそぐわない過熱相場の危うさも垣間見える。

 ダウ平均は今月に入って大きく上昇してきた。開発中のワクチンが臨床試験で高い有効性を示したと欧米の製薬大手が相次いで発表し、早期実用化に強い期待感が寄せられたためだ。

 ただ、3万ドルの節目は株価上昇の「壁」となってきた。失業率が半世紀ぶりの低水準で推移していた今年1月に3万ドルの大台に迫ったが、新型コロナの世界的流行を受けて、3月には一気に1万ドル下落した。

 米政府による大型経済対策や、連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な金融緩和が相場の支えとなり、株価は再び上昇基調に転じたが、今月中旬以降は3万ドルを目前にして足踏みする局面が続いていた。

 相場の重しとなってきたのは米大統領選をめぐる不透明要因だ。それが23日、トランプ大統領が当選を確実にしたバイデン前副大統領への政権移行を容認。先行きを不安視してきた投資家の買いが広がり、終値でも3万ドルを上回った。

 ただ、金融市場に高揚感は乏しい。米国は世界最悪のコロナ感染者数と死者数を記録し、経済活動を停滞させる感染症対策を再び強化する動きが目立つ。

 米金融機関のエコノミストからは「厳しい冬が訪れる」(JPモルガン・チェース)として、来年1~3月期に米経済が再びマイナス成長に陥るとの悲観的な予測も出始めている。

 一方、10月の失業率は6・9%と高い水準が続き、雇用の完全復調には長い期間を要するとの見方が根強い。コロナ禍では、外食や旅行関連など在宅勤務ができない低所得層への打撃が大きく、高所得層との格差が広がる「K字」型の景気回復が起きているとも指摘される。上昇相場は金融市場に流れ込んだ「緩和マネー」の一側面だけを映し出した格好だ。

 完成したワクチンが、医療従事者らの社会活動の基幹職を除く一般の人々に行き渡るのは、来年半ば以降になるとの見方があり、米株価が上昇基調を続けるかどうかは見通せない。

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