選挙区を歩く 東京8区

「石原王国」に地殻変動

 れいわ新選組代表の山本太郎元参院議員が公示前にいったん出馬表明し、全国的な注目を集めた東京8区(杉並区の大部分)。公示直前になって立憲民主党、共産党、れいわの3党間で立民新人の吉田晴美氏(49)での一本化が決まり、8区で無敗を誇ってきた自民党前職の石原伸晃元幹事長(64)に挑む「与党」対「野党共闘」の構図となった。日本維新の会新人の笠谷圭司氏(41)も出馬しており、勝敗の行方は見通せない。

■運動支える共産

 22日、JR阿佐ケ谷駅前で開かれた山本氏の集会には、一時は山本氏と「野党統一候補」の座を争った吉田氏の姿があった。山本氏は今月8日、8区からの出馬を表明したが、吉田氏の支持者からの反発を受け撤回、比例東京ブロックに回った経緯がある。

 この日は「頑張りましょう、一緒に国会に」「衆議院でお会いしましょう」と互いにエールを送り合い、笑顔で肘タッチを交わした。吉田陣営の関係者は「いろいろあったが、最終的には和解にたどり着けてよかった。“雨降って地固まる”だ」と胸をなでおろす。

 吉田氏は今回、立民、共産、れいわの統一候補として出馬。組織力で石原陣営に劣る吉田陣営の運動を支えているのが、共産の存在だ。地元選出の都議や区議が連日街頭に立ち、挙党態勢で吉田氏への投票を呼び掛けている。同党の原田暁(あきら)都議は「これまでの吉田氏の地元での地道な活動を知っているからこそ、われわれも全力で応援できる」と話す。

■「共闘」に警戒

 一方の石原陣営は「野党が一気に攻めてきた」と警戒を強めている。石原氏は19日の第一声で、「共産と立民が『野合』をして、私たち自公に刃を突き付けている」と吉田陣営を牽制(けんせい)した。

 約30年間にわたり石原氏が連勝し続けてきた8区。だが、中選挙区時代には共産候補が当選するなど、際立って保守的な土地柄だというわけではない。そんな8区がなぜ自民の牙城となり得たのか。ある自民区議は「長年の野党の足並みの乱れが石原氏の連勝を生んできた」と語る。

 8区では小選挙区制の導入以来、野党候補が複数出馬する状況が常態化していた。例えば平成29年の前回選では旧立民、旧希望の党、共産の候補らが乱立。石原氏は約10万票を獲得して当選を果たしたが、次点の吉田氏は約7万6千票だった。旧希望や共産の候補者の得票を単純に合計すれば、石原氏を約4万票近く上回る計算になる。

■自民票吸収も

 第三極として石原、吉田両陣営が関心を寄せるのが、維新の笠谷氏の動向だ。維新は他の野党とは異なる保守政党であるだけに、石原氏の選対幹部は「自民票を食い荒らしかねず、今回のような大激戦では勝敗を左右しかねない」と話す。

 元自民党員という経歴を持つ笠谷氏は19日の出陣式で、「一部の組織や団体の利益を優先する自民党の政治はおかしい。自民党を外から崩壊させたい」と強調。候補者の一本化が難航した野党陣営も引き合いに出し「この国をまとめられるわけがない」と批判した上で、「共産と手を組んだ立民にこの国の野党第一党を任せるわけにはいかない」と訴えた。

(竹之内秀介)

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