Fromモーニングピッチ

超高齢化社会の課題山積 シニア・CareTechベンチャーが解決を促す

粂田将伸
粂田将伸

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回はシニア・CareTech特集です。

シニアマーケットは家計消費の4割

 WHO(世界保健機関)では65歳以上を高齢者と定めていますが、今回は60歳以上をシニアと定義しました。2019年の国内の対象人口は4341万人です。

 シニア世代の市場規模に関する直近のデータが乏しいので、私の方で試算してみました。60代、70代、80歳以上の世代別人口に、各世代別の平均消費額を掛け合わせるという手法を適用した結果、2019年の1カ月当たりの世代別消費額は合計で9兆9200億円になることが明らかになりました。年間では119兆円に上る計算です。令和2年の消費者白書によると2019年の家計消費総額は297兆円なので、家計消費の40%を占める巨大マーケットになります。

シニアの課題は“4K”

 2020年時点の日本の推計人口は1億2500万人で、約30年後の2050年には1億人台まで減少する見通しです。各世代が右肩下がりとなる中、65歳以上の高齢者人口だけが唯一、2040年まで増え続けるとみられています。家計消費が変わらないとすれば、シニアマーケットの比率はさらに拡大し、存在感が増すことになります。

 ただ、シニアの人口が増加すると、それに比例する形でシニアの課題も増えていくことになります。有識者の間ではシニアの課題について、健康と経済、孤独という3つの頭文字から取り「3K」と呼んでいます。今回は家族・親族も加えて「4K」とし、その領域の中でベンチャーがどのような課題解決に取り組んでいるのかについて紹介します。

認知症による資産凍結を防止

 経済と家族、孤独というトライアングルの商圏を見ますと家族信託の組成サポート事業を展開するファミトラが、地方銀行と事業提携し、銀行の顧客には初めてとなる家族信託組成サービスの提供を開始します。認知症による資産凍結を防ぐのが目的です。スマートフォンアプリで撮影した動画や写真を実家のテレビに直接送信できる「まごチャンネル」を販売しているチカクは、今年4月に5億円を調達しました。累計調達額は15億円に上ります。

 経済と家族、健康という領域では、転んだ時だけ柔らかくなるMagic Shieldsの「置き床」が、経済産業省のジャパンヘルスケアビジネスコンテストでグランプリを受賞しました。

脳の健康レベルを可視化

 AIサービスのエクサウィザーズは健康と家族、孤独という領域の課題解決に取り組むため、福祉用具レンタルのヤマシタと合弁会社を設立しました。数万人規模のデータを解析することにより、在宅介護を支援します。東北大発ベンチャーのCogSmartは欧州の大手電気機器メーカーと連携し、画像解析AI技術を活用して脳の健康レベルを可視化し、将来の認知症予防のアドバイスを提供する脳ドック用プログラムの提供を開始します。

 今回はシニアが抱えるさまざまな課題を解決するベンチャーの中から5社を紹介します。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング