社長を目指す方程式

運を操りキャリアを切り拓く 5つの心構えと5つのレッスン

井上和幸
井上和幸

 折しも米国では1980年代に産業再編の嵐が吹き荒れ(日米貿易摩擦の頃ですね)、その中でビジネスパーソンはキャリアについて次の3つのように考え動く必要があることを、当時クランボルツは指摘しました。

(1)すでにある特性に基づいた意思決定ではなく、自分の能力や興味を広げていく必要がある

(2)職業が安定したものであると思い込むのではなく、変化し続ける仕事に対して準備をしなければならない

(3)行動を起こすように勇気付けられる必要がある

 そしてクランボルツは、キャリアカウンセリングの目標を次のようにまとめています。

 「現在クライアント(=キャリア相談者、転職相談者)が有している興味・価値・能力にマッチした職業を見つけることではなく、変化し続ける仕事環境において満足のいく人生をクライアントが作り出していけるようにスキル・興味・信念・価値・職業習慣、個人特性に関する学習を促進させること」

 私自身も日々、幹部や経営職の方々へのキャリアアドバイスを行う立場を担っていますが、まさに今、日本で働く私たちにとっても、全く同様のことが必要だと実感しています。これまで培った経験やスキル、現時点での興味関心だけにマッチした職務を見て転職先を決めることは、本人にも採用企業側にも、「その後」という意味において必ずしも望ましいものではないのです。

 キャリアの意思決定など、するな?!

 「私たちは、人々がキャリアについての意思決定をするための支援に多くの時間を費やしてきました。しかし、みなさんには、今後一切キャリアの意思決定をしないで欲しいのです」

 なんと!クランボルツはその著書『その幸運は偶然ではないんです!』(ダイヤモンド社)で、このように述べています。それはなぜでしょう?

 キャリアについての意思決定をするとは、一つの固定したキャリアを宣言することになりますが、自分自身も取り巻く環境も、時事刻々と変化し続ける現代において、それは果たして正しい選択でしょうか?ということを、クランボルツは投げかけているのだと思います。同感です。

 私たちのキャリアは、用意周到に計画できるものではなく、予期できない偶発的な出来事によって決定される。偶然を柔軟に受け止め、その結果を計画的にデザインしていくことでこそ、良いキャリアを展開できるのです。

 さて、クランボルツが「計画的偶発性理論」の研究で明らかにしたところによると、偶然を味方につけるために、私たちが持つべき心構えは「好奇心」「粘り強さ」「柔軟性」「楽観性」「リスクテーク」の5つとのこと。

今回の社長を目指す法則・方程式:

プランド・ハップンスタンス・セオリー(計画的偶発性理論)

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング