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時代とねぎらい背景に 「介護」の言葉はなぜ必要だったのか

 「介助」+「看護」=「介護」-。日本に介護市場が誕生する前の昭和59年、独自のはっ水技術を基に赤ちゃん用おむつカバーなどを手掛けていたフットマーク(墨田区)の磯部成文社長(77)=写真、現会長=は、「介助」「看護」から1文字ずつを取って「介護」という言葉をつくりだした。「介護」という言葉の起源には諸説あるが、なぜ新しい言葉が必要だったのか。当時の背景を聞いた。(手塚崇仁、写真も)

 「うちのおじいちゃんが最近お漏らしをするようになって…。磯部さんのところで大きなおむつカバーを作ってもらえませんか」

 昭和21年に創業した同社が、「大人用おむつカバー」(後の介護用おむつカバー)の販売を始めたのは45年ごろ。そのきっかけは、「近所のお嫁さんが、こっそり来社されたこと」だった。

 女性の話を聞いた磯部さんは、「実は言わないだけで、同じ悩みを持っている家庭はたくさんあるのではないか」と考えた。「当時は身内の具合が悪いことは世間に隠す時代だった。介護はある意味、外から見えないブラックボックスとなっていた」と振り返る。

 発売した大人用おむつカバーは、1年で10枚ほどしか売れなかった。おむつカバー単独では何の商品なのか認知されなかったためで、シーツや寝間着などと一緒にカタログに掲載したところ、「こういう商品もあるのか」と認知度が徐々に上がっていった。

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