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“ありえなかった”会長就任 稲盛和夫氏に学ぶ「火中の栗の正しい拾い方」

 平成を代表する経営者・稲盛和夫。「利他の心」から発した数々の挑戦は、現在のKDDIの創業など卓越した成果を残している。そのエッセンスはどこにあるのか。稲盛氏を知るジャーナリストの渋谷和宏氏に聞いた。

 なぜ稲盛さんはJAL再生を引き受けたか

 「京セラの稲盛和夫名誉会長が、日本航空(JAL)の代表取締役会長に就任」。新聞の夕刊やテレビがいっせいに報じた2010年1月13日の午前、私は東京駅に近い京セラ八重洲事業所で稲盛和夫さんにお会いしていた。稲盛さんに長期にわたり密着取材して執筆したビジネス書が出版間近となり、その報告にうかがったのだ。

 本題が終わり、昼食を食べながら雑談しているうちに話題は自然にJAL会長就任問題へと移った。稲盛さんは「JALにはいい印象がなかったのだけれど」と打ち明け、こう続けた。

 「実はJALの若手社員たちから手紙をいただいてね。JALを変えたい思いや私と一緒に働きたい気持ちが率直に綴られていて、いろいろ考えたけれど『そうか、そういうことなら』と」

 「引き受けるのですか!?」

 「引き受けようと思う」

 迷いも力みもないその言葉の響きを私は今でもよく覚えている。稲盛さんのこれまでの生き方・働き方からすれば、JALの再建という困難への挑戦は必然とも言える決断なのだなと、そのとき、胸にすとんと落ちたからだ。

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