主張

最低賃金引き上げ 中小の収益向上が重要だ

 厚生労働省の中央最低賃金審議会が今年の最低賃金の目安額について、全国平均で1時間あたり901円とすることを決めた。前年より27円上昇し、東京都と神奈川県は初めて1千円の大台に乗ることになる。

 賃金の引き上げは、個人消費の活性化につながる。民需主導の経済再生を果たすためにも、着実な賃上げが欠かせない。

 ただ、最低賃金は強制力を伴う法定賃金であり、地方の中小企業などへの影響が大きい。この数年は大幅な引き上げが続き、対応が厳しい中小・零細企業が増えている現実も直視する必要がある。

 最低賃金の引き上げにあたっては、中小企業の収益向上を促す取り組みと同時に進めることが肝要である。政府はそうした環境づくりに注力すべきだ。

 働く人すべてに適用される最低賃金は、毎年、厚労省の審議会が示した目安額を参考に、都道府県の審議会が具体的な金額を決定する。政府は今年6月の「骨太の方針」で、「より早期に全国平均で時給1千円の達成を目指す」と打ち出した。

 この方針に基づいて今年の目安額は、全国平均で初めて900円を上回った。都道府県別では東京と神奈川が1千円を突破した。すでに都市部では、深刻な人手不足を背景にパート・アルバイトの時給が上昇しており、最低賃金も着実な引き上げを進めたい。

 一方で地方では、急激な引き上げのペースに中小・零細企業が悲鳴を上げている。

 日本商工会議所が懸念を表明したのもこのためである。各地域の最低賃金に沿って従業員の賃金を決めることも多く、そうした企業に対する配慮が欠かせない。

 安倍晋三政権は経済界に賃上げを働きかける「官製春闘」で一定の成果を収めた。だが、最低賃金は労使交渉で決める春闘とは異なる。これを払わなければ処罰される強制力を伴う。最低賃金を払えない企業が雇用を削減すれば、働く人のためにもならない。

 そうした事態を防ぐためにも、中小企業が着実に賃上げできる環境を整えなければならない。生産性を向上させるため、省力化投資などを促す支援も拡大すべきだ。中小が必要なコストを納品価格にきちんと転嫁できるようにするため、大手との取引条件の見直しなども不可欠だろう。

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