社会・その他

京アニ支援に20億円 8割は1万円以下「若い人の思い集まる」

 製作の拠点と多くの貴重な人材を失った京都アニメーションの再建に向け、支援金を募る口座には、発生から1カ月が経過した今も、国内外から多くの支援が寄せられている。京アニによると、16日時点で約19億9760万円(7万1984件)。もっとも、最大の課題は金銭的な問題よりも、京アニが紡いできた技術と文化の継承とみられている。多くのファンに愛されてきた京アニだが、復活までの道のりは険しい。

 同社代理人の桶田大介弁護士によると、16日時点で集まった7万1984件のうち、1万円以下が最多の5万6631件(構成比78・7%)だった。3千万円と1億円も1件ずつあった。

 1万円以下の振り込みが多数にのぼったことについて、桶田弁護士は「多くの若い方々にとって作品が大切な存在だったことを表している」と説明。振込人名義を同社へのメッセージ文にする人も多いといい、「作品を作り上げてきた人々に対する思いの結晶だと感じる」と話す。

 桶田弁護士によると、同社が設置した口座だけでなく、ヤフーや海外企業など外部機関が行う募金も含めると、世界各地で支援した個人は少なくとも10万人はいるとみられる。

 寄付をする側と受ける側をつなげているNPO法人「日本ファンドレイジング協会」は「少額でも何か自分にできることをしたいという思いで、寄付する人が増えているのではないか。自分が出したお金がどのように使われるのか、明確にイメージできることも大きい」と指摘。海外に比べて寄付文化が浸透していないといわれる日本だが、「恩返しをしたいと思う文化は日本特有で、今回の事件もファンの気持ちが大きいのだろう」と推測する。

 再建に向けては、一部の原画などの紙資料は焼失したものの、スタジオ内にあったサーバーに残されていた製作関係の資料とみられるデジタルデータは欠損なく回収されていることも明るい材料だ。

 しかし、仮にハード面がそろったとしても、事件ではそれらを生かすべき人材を失った。周囲が支援の手をさしのべようにも、アニメ業界はテレビや映画のみならず、広告やインターネットコンテンツなどにも活躍の場を広げており、常に人材不足という問題を抱えている。

 アニメーターとしても活動する京都精華大学マンガ学部アニメーション学科の大橋雅(まさ)央(ひろ)学部長(専任講師)は「同業他社には京アニを助けられるだけの体力がない」と指摘。「京アニ自身が新たに人材を育成していくしかないのだが、事件ではこれまで指導的な立場にあり、京アニの文化を伝えてきた人々も犠牲になっている。しばらくは厳しい状態が続くのではないか」と話している。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング