ローカリゼーションマップ

欧州ブランドは「古臭い」のか 多文化主義の波が問う「西洋的価値観」

安西洋之
安西洋之

 この十数年間、欧州のラグジュアリーブランドは「古臭い」と見られるところがあった。

 1つには、ブランドが新興国の成金市場で成立していることがはっきりしたからである。2つには、欧州の「西洋的価値観」の行き詰まりに対する冷淡な視線のせいだ。

 特に2つ目の点は、多文化主義が新しい道であり、人種・性・宗教など従来の枠組みを超えた社会をつくることが先端だとの認識と関係する。実際、欧州は多くの違った移民を受け入れてきたがゆえに、その先端社会モデルとも考えられ、欧州にこそ新しいライフスタイルの起点があるとみられてきた。

 ぼく自身もそう思ってきた。やっかいな問題がたくさんあるから、欧州には次の時代を担う知の宝庫であると思ってきた。

 ただ、英国人ジャーナリストであるダグラス・マレー『西洋の自死-移民・アイデンティティ・イスラム』を読み、多くの示唆を得られたなか、次の文章で、置き忘れてきた、いや置き忘れてしまおうとぼく自身が思っていたことに気がついた。

 「欧州の未来はおおむね、この地に受け継がれてきた教会の建物や、偉大な文化的建造物に対する我々の態度で決まるだろうと。果たして我々がそれらと敵対するのか、憎悪するのか、無視するのか、つながりを保つのか、はたまた尊び続けるのかという疑問に関しては、多分に状況次第ということになろう。

<中略>

我が社会を特徴づけるのはもっぱらバーとナイトクラブ、放縦と権利意識だと語るような社会は、深い根を持つとは言えず、生き残る可能性は低い。一方、我が社会は大聖堂や劇場、スタジアムやショッピングモール、そしてシェイクスピアからなると考える社会には一定の可能性がある。」

 欧州文化の特徴であり続けてきたキリスト教文化の共有とハイカルチャーへの敬意、これらの2つの凋落シーンをどう見るか?である。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング