働き方

迫る経営者「大量引退」に危機感 政府、中小の事業承継支援を拡充

 中小企業の代替わりを促すため、政府は事業承継支援の拡充に乗り出す。年を重ねた経営者の「大量引退」が迫る中、少子化や子供が望まないといった事情で後継ぎが見つからないケースは多い。手を打たなければ廃業が広がって雇用喪失が約650万人に上るとの試算もあり、ひいては経済失速にもつながりかねないと関係者は危機感を募らせている。

 「後継ぎがいないので廃業せざるを得なかった」。京都市で200年近い歴史を持つ老舗「京菓子匠 源水」を営んできた井上清文さん(73)は昨年春、店を閉じた。娘2人は嫁ぎ、弟子も不在。後継者探しを支援するなどの公的制度も知らなかったという。

 2019年版中小企業白書で示した調査によると、廃業した経営者が事業を続けなかった理由(複数回答)のトップは「自分の代で畳むつもりだった」の58.5%だが、「資質のある後継者候補がいなかった」が19.8%、「家族・親族から事業継続を反対された」も7.1%あった。

 中小、個人事業主が外部に後継者を探し当てても、事業に精通させて取引先の信用を得るのはたやすくない。井上さんは「技術の伝承には10年はかかる」と指摘し、長期的な視点での支援が必要だと訴える。

 中小企業庁によると、25年に70歳以上になる中小企業経営者は約245万人に上るが、うち約半数は後継者が未定。放置すれば廃業が相次ぎ、15~25年に約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われると試算する。

 安倍晋三首相は「中小企業が後継者難で廃業に追い込まれる事態は、日本経済にとって大きな損失だ」と強調。政府は、経営者が金融機関から担保に加えて債務の個人保証まで求められる慣行にもメスを入れ、後継者が事業を引き継ぎやすい環境を整える方針だ。

 一方で企業経営者の中には、ベンチャー企業を次々と立ち上げては他社に売却する「連続起業家」と呼ばれる人もいる。第三者への株式譲渡で、経営者が多額の利益を得られる優良企業の承継まで優遇すれば、過剰支援との批判は免れない。政府には、国民の理解を得られる制度設計が求められる。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング