著者は語る

本気ファクトリー代表取締役・畠山和也氏『17スタートアップ』

 □『17スタートアップ-創業者のことばから読み解く起業成功の秘訣』

 ■共通して経験する課題とその解決法とは

 東洋の奇跡と呼ばれた戦後の高度経済成長を経て、日本はバブル景気とその崩壊を経験した。その後、「失われた10年」と呼ばれた時代が20年になり、そろそろ30年になろうとしている。

 その間、そして特に2010年以降、日本経済は世界におけるポジションを急速に失った。1994年には世界で17.7%あった名目国内総生産(GDP)シェアは、2017年に6.1%まで落ち込んだ。また、1990年には米国の60%程度まで近づいた名目GDPだが、現在は4倍以上、2位の中国に対しても3倍近い差をつけられてしまった。

 この間、日本では一部の例外を除き新しい産業が大きくなることができなかったが、米国や中国では企業価値ランキングをほぼ塗り替えるほど、新しい産業が生まれた。

 これほどまでに差をつけられた主な要因の一つとして新規事業の不足が挙げられる。新規事業の創出が不得手といわれる大企業に代わって近年、創業間もないスタートアップが担い手として期待されている。

 本書は2018年に早稲田大学産業経営研究所の協力を得て、シード期からM&A(企業の合併・買収)やIPO(新規株式公開)経験済みなど全ての起業ステージ別に10回、17人の創業経営者の講演内容をもとに、スタートアップが共通して経験する課題とその解決をまとめた。

 今回、改めて分かったことは「新規事業の開発において多くの企業は共通の失敗を経験する」ということだ。例えば、採用では「スキルではなく、企業文化に合う人材を採用しよう」ということは、あらゆる人材メディアでいわれている。しかしながら、いざ自分が起業するとどうしても企業文化に合わない人材を採用してしまいがちだ。

 その結果、組織面での課題が発生し、解決のために多くの労力を割くことになる。これは本当に多くのスタートアップが経験している。

 事前に起こりうる課題を知って、対策を取っておけば問題の発生を回避することができるかもしれないし、仮に発生しても被害を最小限に抑えられる。

 一社でも多くの企業が先人の経験を基に、無用な問題に巻き込まれることなく、スタートアップに成功することを願っている。(1800円+税 早稲田大学出版部)

                   ◇

【プロフィル】畠山和也

 はたけやま・かずや ソフトバンクBB(現ソフトバンク)、リクルート、スターティアラボ、ラクスルで一貫して新規事業に携わる。2014年の本気ファクトリー設立後は、三井不動産など大企業の新規事業開発を支援すると同時に、複数の企業で働くパラレルキャリア人材としてHISグループの金融子会社H.I.S.Impact Financeや大学生キャリア教育のBYD、スマートロックのビットキーに役員として参画している。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング