社会・その他

先斗町のギャラリーが「京都市美術館」改名 “本家”は「炎上商法では?」と困惑

 ネーミングライツ(命名権)契約により、来年3月に「京都市京セラ美術館」(京都市左京区)としてリニューアルオープンする京都市美術館だが、京都五花街の一つ・先斗町(ぽんとちょう)のビルに同じ「京都市美術館」を自称するギャラリーがある。「捨てちゃうなら拾っちゃえ」とギャラリーのオーナーが自称として付けた“新・京都市美術館”に“本家”の市美術館は「炎上商法では?」と困惑している。(小川恵理子)

 「どうせ捨てちゃうなら」

 ギャラリーのオーナーは九州を拠点に活動する現代アーティスト、LICCA(リカ)さん。10年ほど前に、若手アーティストが気軽に作品を展示できる場所をつくろうと、京都市中京区の先斗町のビルにギャラリーを構えた。作品展などで京都と九州を行き来していた平成28年6月、京都市が美術館の整備費用(約100億円)の半分を賄うためにネーミングライツの導入を決めたことを知り、「美術館が自らの歴史ある大切な名前を企業に売るのか」と違和感を覚えたという。

 命名権については市民団体からも反対の声が上がっていたこともあり、「ギャラリーの名前を市美術館に変えることで、賛否も含めたさまざまな議論が始まる場になれば」と今年10月、「オルタナティブスペース」という正式名称があるものの、ギャラリーの自称を『京都市美術館』と変更。自ら「館長」を名乗り、それに先だちツイッターのアカウント名も「かんちょう」に変えた。

 「(名前を)捨てちゃうんなら拾っちゃおうかな」という発想で名付けた自称・京都市美術館。リカさんは「アートは実験的なもので失敗は恐れずに挑戦していくもの」と話す。

 炎上商法では…

 一方の京都市美術館。担当者によると、市京セラ美術館は施設の総称(通称)で、リニューアル後も登記や書類上の表記は「京都市美術館」のまま残るといい「通称は50年という期間限定で、市美術館という名前がなくなるわけではない」と話す。

 京都では「京都芸術大」に名前を変えたい京都造形芸術大に京都市立芸術大が待ったをかけた問題が記憶に新しいが、市美術館の担当者は「まったく次元が違う」と強調。今回の件について「軽い気持ちでされていることにすぎないし、市美術館と誤解する人は少なく、実害はない」と相手にしない構えだが、「炎上商法では?」とばっさり切る。

 さらに、リカさんが名称変更を「ちょいと悪戯(いたずら)したくなって」と表現していることに触れ、「議論を生み出したいのなら、遊び感覚で『大切な』名称を使うことと矛盾しているのではないか」と疑問を呈するが、リカさんは「そういう反応も含めての議論だ」と意に介していない。

 京都市美術館 昭和8年建設。昭和天皇の即位の大典を記念した「大礼記念京都美術館」と名付けられた、日本で2番目に古い大規模公立美術館。改修工事のために平成29年から休館中。令和2年3月のリニューアルオープンから50年間は、ネーミングライツ契約(50億円)を結ぶ京セラ(京都市伏見区)の名前をとった「京都市京セラ美術館」となる。

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