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「メイド・イン・イタリー」にみる手仕事の意味 標準化でなく多様化戦略

安西洋之
安西洋之

 『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』を出版してから、およそ2カ月がたった。この本では、「メイド・イン・イタリー」がなぜ注目され続けているのか。その背景を探っている。

 「メイド・イン・イタリー」をグーグル検索すると、欧州の他「メイド・イン・○○」と比較しても常に上位にくる。商品と名前が世界市場の隅々まで行きわたるのではない。それなりの数の海外市場で強烈な存在感を発揮している、というタイプだ。なぜ、それが可能なのか?

 ぼくは2つの理由を挙げている。

 1つは「意味のイノベーション」を得意とすること。問題解決もさることながら、意味をつくることに長けている。その結果、ブランドや商品を通じてある「世界観」が提示される。

 ぼくがイタリアの色々な企業の経営者や研究者に「イタリアの企業は、意味のイノベーションに強みがありますよね」と話す。相手が「意味のイノベーション」という言葉を知らない場合は、ぼくが少し解説する。すると、「そりゃあ、そうだ。我々の得意技だ」との言葉が即返ってくる。

 もう1つが、「手を使うことへのこだわり」だ。頑固おやじが小さな工房に籠っている、ということだけを指しているのではない。それなりの規模の企業のそれなりの量産においても、「ある程度の工程に手仕事を残す」ことに自社のビジネスの競争性を見いだそうとするのである。それで差別化が図れる、と。

 出版から2カ月を経て痛感することがある。意味のイノベーションはこの3年間、エヴァンジェリストとして散々話してきたことなので、この点を意外と思う読者は少ない。しかし、「そこに価値があったのか!」と、手を使うことに驚かれる。

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