伝え方や言い回しを変えると、自分を取り巻く環境が変わり、やってくるチャンスも変わっていきます。皆さんは自分のコミュニケーションに自信がありますか? この連載ではコミュニケーション研究家の藤田尚弓が、ビジネスシーンで役立つ「最強のコミュニケーション術」をご紹介していきます。
第22回は「言いにくいことの伝え方」がテーマです。上司からの残念なアドバイスへの対応、催促、断り、指摘、などなど。言いにくいことを伝えなければならないシーンは意外に多いものです。ビジネスシーンでは、言いにくいことを伝えるのも大事な仕事です。だからといって不快感を与えるような言い方をしていませんか?
配慮のない言い方は、周りからも見られています。正論を振りかざすことなく、配慮ある伝え方をするにはどうしたらいいか。具体例を見て勘所を掴んでおきましょう。
上司の的外れな意見やアドバイスをかわしたい
アドバイスは嬉しいものですが、現場をわかっていない上司や先輩から、的外れな意見をもらって困るという人もいるのではないでしょうか。
たとえば、営業活動で上司から「やっぱり足で稼がないと。通う回数が足りないんじゃないか。同行してやるよ」と言われたとします。このようなケースでは、否定のニュアンスが出ないように、部分肯定を使うのがお勧めです。
▼ストレートに言う
部下「いや、そんな時代でもありませんし、A社とは価格が合わないので、そこを解決してからじゃないとダメなんです」
冒頭の「いや」という一言だけで、相手は批判されたような気持ちになります。正論であっても、反論スイッチが入るような言い方はNGです。第一声は特に、柔らかくするようにしましょう。
▼柔らかく伝える
部下「心配してくださって、ありがとうございます。安心して任せてもらえるよう頑張ります」
否定のニュアンスを含む言葉を排除したフレーズです。心配してくれたことに対してお礼は言っていますが、アドバイスの内容については肯定していないのがポイントです。任せてほしいという意思を伝えることもできます。
入金や仕事などの催促をしたい
約束の期日が守られない。そんな時、皆さんはどんな催促の仕方をするでしょうか。迷惑をかけられている側は「ビジネスなのだから厳しい言い方をするのも仕方がない」と思う人も多いと思います。無意識にやってしまいがちなストレートな催促を見てみましょう。
▼ストレートに催促する
「振込み期日は昨日だったのですが、どうなっていますか?」
文字だけ見ると穏やかに質問しているようにも見えます。しかし、質問には相手を責めるようなニュアンスが含まれることがあります。「なんで、できないの?」「このままで問題ないとおっしゃるんですか?」「ちょっと無理じゃないでしょうか?」など、皆さんも、人からの質問で批判されたように感じたことがあると思います。質問をするときは、声のトーンを柔らかくする、メールのときは批判に受け取られないよう、気遣いの一言などを加えましょう。
▼柔らかく伝える
「まだ入金が確認できていないようなので、何か手違いがあったのではないかと思い連絡してみました」
「確認できていないようだ」という、曖昧さの残る言い方であっても、言いたいことは伝わります。着金のタイムラグや行き違いを考慮している感じも伝わります。悪意なく忘れてしまい、ハっとしてくれるような相手には柔らかい言い方で十分です。万が一、自分の勘違いだった場合にもダメージは少なくて済みます。
責められたように感じると、無意識のうちに心のバランスをとろうとすることがあります。「売るときばかり一生懸命で、請求のときには態度が変わる」など、相手を悪く考える人もいます。トラブルを防ぐためにも、柔らかい言い方はお勧めです。
次に、仕事の進捗を確認して催促しなければならないケースを見ておきましょう。