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高校生の「就活」を改革する 若きリーダーの怒り、そして挑戦

吉田由紀子
吉田由紀子

 大学生の就職活動といえば、企業訪問や合同説明会、インターンシップなど数多くの情報源が用意されている。これらに参加して希望の企業を見つけ、複数社にエントリーするのが一般的である。

 その一方で、実情がほとんど知られてないのが、高校生の就職活動である。いったいどんな状態かというと……

 「生徒は1人1社しか応募できない」

 「求人票は紙1枚のみ」

 「学校が紹介した企業しか応募できない」

 「1つの企業には各高校から1名程度しか応募できない」

 「内定辞退はしにくい」

 あまりにも制約が多く、大学生とは大きな違いだ。

 とはいえ、高校生の就職内定率は、98.2%(2020年3月期、文部科学省の調査)。ほぼ全員が就職を果たしている。しかし、3年以内の離職率は39.2%と、4割近くにものぼる。「紙1枚の求人票」という限られた情報で就職先を選ばねばならず、職場の実態もわかりづらい。その結果、入社後にミスマッチが起きてしまい、離職につながるのである。

 こうした現状を改革しようと立ち上がったベンチャー企業がある。株式会社アッテミーだ。2019年に設立された同社は、高校生の就職を支援するために様々な活動を行っている。求人票閲覧時のアドバイスや履歴書作成、面接指導、社会人との座談会、また、高校生に特化したインターンシップや職場見学なども実施して、生徒をサポート。国家資格であるキャリアコンサルタントの資格を持つスタッフが手厚く対応している。

 旧態依然とした就活に怒りも…高卒就職の実態をじっくりと探る

 なぜ、高校生の就活支援を事業にしたのか?

 代表取締役の吉田優子さんに取材を行った。大学卒業後、楽天株式会社へ入社した吉田さんは、楽天市場の担当者として働く中で体験したことが、転職のきっかけになったという。

 「楽天市場では、学歴に関係なく、売り上げを伸ばしているショップが数多くありました。また、ごく普通の主婦が驚くような成功を収めている店舗もあり、これからは、学歴など関係なく、実力がものをいう時代になると確信しました。多様な進路の選び方が必要だと感じるようになったのです」

 2013年、楽天を退職し大阪の公立高校のキャリアコンサルタントの求人に応募。念願が叶い採用されたものの、いざ高校で働き始めると、高校生の就活が制約だらけである現実を目の当たりにする。

 「頭を撃たれたようなショックを受けました。これからの社会を担っていく高校生があまりにも旧態依然とした就職活動をしなければならないこと、怒りも湧きました。最初の1年は、高卒就職の実態をじっくりと探りました。わかったのは、高校は大学に比べて授業に時間を取られるため、そもそも就職活動に割く時間が少ない。そのため短期間での就活を終えざるを得ない仕組みになっていることです。また、職場体験やインターンシップの機会もほとんどない状態でした」

 大学と異なり、高卒求人は原則として「文字情報のみの求人票」が高校に配布される。その中から教師が選んで、生徒に推薦する流れになっている。

 「生徒が選ぶ力が養われていないため、教師や保護者の価値観が大きく反映されます。生徒ではなく教師が主体となって就職先を決める現状は問題です。結果的に生徒は就活に関する知識を十分に持たないまま、社会に出てしまいます。ですから一旦離職をしてしまうと、どうやって就活をすればいいのか、よくわからない生徒が多いのです」

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