時代の人日本を面白くする企業

猪子寿之

ヤバい仕事をしていれば、仕事がくる

  -社内の組織について伺います。「営業組織」がないとの話がありますが?

 別会社で、他商材を扱っている営業組織はありますが、チームラボ自体の案件を営業している組織はないです。

 創業時から、たまたま、みんなエンジニアしかいなかったってことと、ちょっと前まで、エンジニアとかデザイナーとかクリエイティブな仕事のわりに、あまり評価されていなかったと思っていて。そうじゃなくて、クリエイターの価値はもっと高い、ビジネスの理屈を超越して「クリエイターがいいものを創ればどうとでもなるんだ」って思いがあった。

 ネットが出る前は、ヤバいものを作っても、流通コストが高くて、広告出したり、マーケティングしたり、営業しなければ売れなかった。今はヤバいものを創っていれば勝手にネットが拡散してくれる。それを見て評価して仕事がやってくる。仕事が広告になってくれるんです。

 部長とか課長とか、そういうのもない。というかそういうモノが分からない。でもPM(プロジェクトマネージャー)って専門職がいて、PMたちが集まって、担当した案件での新しい発見や課題を共有している。それ以外は皆、プロジェクトごとにバラバラで動いてる感じ。で、新しいプロジェクトがあると、リソース会議を開いて、そこで人をアサインする。俺はその会議出たことないけどさ(笑)

 売上げ目標とかも出したことない、予算や個人予算もない。ただ、「プロジェクト毎に赤字にならないようにしましょう」とか言ってる・・・いや言ってないかも、でも、赤字はイヤじゃないですか。続けられなくなっちゃうから、それは皆分かっている。そして、儲かったらボーナスは皆平等に分けてます。


超個人主義から「共創」社会へ

  -今後手がけて行きたいことはありますか?

 「子供の教育」に関して考えてます。チームラボの共同創業者たちも子供ができてきて身近に感じるようになったことが大きいかな。僕は結婚しないけど。

 日本の教育って超個人主義だと思いませんか? 宿題もそうだし、テストもそう。徹底した個人主義。皆同じ教材を1人で勉強して、個人別に評価する。チームでの評価はしない。今はネット検索があるから「1603年 江戸幕府」とか、表層的な記憶で済むものは意味を成さなくなってきているのに。

 日本人は集団行動はできる。だけど、集団行動は個人主義の延長で皆が同じことをやること、チームプレイとは別物です。チームプレイは、各々が長所を活かして別々なことをやって、ひとつのモノを創っていくこと。これからの時代は、チームで何をするかが重要だと思う。共同で創造するという行為、僕たちはそれを「共創」って呼んでいます。

 子供たちが「共創」を体験できる機会として「チームラボ、学ぶ! 未来の 遊園地」というプロジェクトに取り組んでます。

 これは、子供たちが同じ空間で自由に体を動かしながら遊び、互いに影響を与えながらテクノロジーを使ってアートを創る遊園地です。例えば「お絵かき水族館」。子供たちが描いた絵たちが、そのままディスプレイの水族館で泳ぎ始める。子供が近づくとエサが出てきたり、エサをあげると魚が集まってきたり、似た色の魚同士が一緒に回遊したり、子供たちが描いたオリジナルの魚がお互い影響しながら、水族館の生態系を創っていく。その他にもさまざまな仕掛けを用意しています。 この試みを、全国で催事としてやっていきたいし、関東圏での常設もしたいですね。


猪子寿之氏

いいものを創るために、犠牲をいとわない覚悟が必要

  -チームラボが求める人材は?

 専門的なスキルが必要です。CGとかプログラムとか、もう一つは、「1人じゃくて、皆で何かを作りたい」「いいものを創って世の中を変えたい」って気持ちが大切。

 そして、この分野で生きていくなら、腹をくくっている人。いいものを創ることが、世間一般的に重要だと思われていることよりも重要だと思っている人、いいものを創るために他を犠牲にできる人。他はダメだけど、ある分野だけスゴイとか、バランス型よりも1点突き抜けている人がいいです。

わくわくする未来の可能性を提案していきたい

  -最後の質問です。さらに日本を面白くするために手がけて行きたいことは?


 自分たちのクリエイティブは、個人から生まれているものではなく、過去から現在まで連続した日本文化の流れの上に生み出されたものです。この延々と続く日本文化の連続性の一旦を担うような活動をしていきたい。

 その取組みの中で、デジタルを利用した創造の可能性を社会に提案して、未来が良くなるヒントが見つかればいい。自分たちのクリエイティブが結果として、わくわくするような日本の未来に繋ながることを願ってます。

<了>

(産経デジタル 取材 文/舟木純 撮影/木山久男)

<前編を読む>

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