トップフォーラム「テレワークでワークスタイル変革」 多様な働き方と人材活用の実現を目指して
事例講演1 ワークスタイル変革への取り組み
ビジネスパフォーマンス向上に寄与
日本マイクロソフト 代表執行役社長 樋口 泰行 氏

「わが社は、2011年に都内5ヶ所に分散していたオフィスを品川新本社へ統合して、経営効率の向上を図るとともに、全社的にワークスタイルの変革に取り組んできた。私自身、これまでに何社かの企業変革に取り組んできたが、リストラやコストカットなどの戦略立案が優先され、ワークスタイルの見直しなどは後回しにされる傾向にあった。人そのものの生産性や働く効率については、あまり注目されてこなかった。しかし、ワークスタイル変革は、漢方薬のようにじわじわと経営にプラスの効果を与えると感じている」と樋口氏は語る。

かつて同社では、オフィスの分散や月に75万枚という大量の紙の印刷などに代表されるムダなコスト、社員間の意識・文化の違いやビジネスパフォーマンスなどの点で、多くの問題に直面していた。海外の他の支社と比べて低い生産性から、本社から‘Sick Sub(病んだ支社)’と評価されていたこともある。

こうした課題を解決するために、同社では「企業文化、経営ビジョン、制度・ポリシー、ICT活用、オフィス環境」という5つの要素を検討し、変革に取り組んできた。具体的には、オフィス環境を刷新するために品川に移転してフリーアドレスを実現。また、制度・ポリシーにおいては、テレワークと在宅勤務を段階的に導入し、2011年に全社員へ展開した。そしてICT活用においては、同社のLyncというテクノロジーを活用して、ビデオ会議やIP電話を利用できる環境を整え、フレキシブルなワークスタイルを実践するようになった。こうした取り組みが効果を発揮して、コスト管理、社員の意識・文化、ビジネスパフォーマンスの面で、大きな成果を発揮したという。

「テレワークなどによるワークスタイル変革を実現したことによって、交通費や出張費は年間で12.2%削減できた。また、紙材の消費量も28.1%減り、電力消費も40.1%節電できた。社員の意識調査の結果では、9割の社員がフレキシブルワークは必要だと回答している。加えて、ワークライフバランスのスコアは17%改善され、女性の退社率も低下した」と樋口氏は効果を説明する。業績の面でも、2011年度と2013年度を比較すると、受注額で27%増、商談数で47%増というビジネスパフォーマンスを発揮したという。講演の最後に、場所や時間にとらわれない働き方を実践している社員のビデオが紹介され、テレワークが同社にとっていかに有用であるかが示された。