CONNECT in 丸の内

ゴミ拾いで繋がるボランティアSNS ビジネスと環境問題への対策両立に挑戦 (2/2ページ)

東京21cクラブ
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 また、ゴミ拾い活動が自動的に記録され、地域の清掃にどのくらい貢献したのかが分かるような仕組みとなっています。リリースして約9年、ピリカは世界107カ国で利用され、累計1.6億個以上のゴミを回収するまでに成長を遂げました。

 ここで、モデレーターからは「多くの国で利用されるために、どんなアクションを取ったのですか?」と疑問が投げかけられました。

 「ゴミ拾いSNSのリリース時、私が学生だったこともあり、友人の多くが海外へ卒業旅行に行っていました。最初は友人に海外でピリカを使用してもらうようお願いしたり、現地の人にも普及活動を依頼したりしました。やがて海外での利用者が増えていくと、国内でのメディア露出も多くなり、少しずつ使ってくれるユーザーも増えていきましたね」

清掃の可視化や社会貢献のPR活用でビジネス拡大

 一見、順調にサービスが成長していると思われたピリカ。しかし、その裏側には環境問題への取り組みをビジネスとして成立させるための苦悩がありました。

 「最初の導入事例をつくるまでは、とにかく様々な業界の方と話をするなど、売れる糸口を見つけるために迷走していた時期もあり、ピリカのマネタイズには約3年かかりました。初めて契約にいたったのは福井県庁さん。福井県では、清掃イベントを開催してもご年配の方ばかりで、参加メンバーが固定化しているという問題がありました。そこで、若い人たちにも出勤時間を使ってゴミ拾いをしてもらおうと、ピリカが採用されたのです」

 この福井県での事例を皮切りに、ゴミ拾いに課題感を持っている自治体での採用が続いたといいます。また、2016年には、人工知能を用いた画像解析により、ポイ捨てゴミや歩きたばこの分布や深刻さを調査する「タカノメ」をリリース。施策の効果測定や改善提案を通じて、自治体や企業と組んで環境に優しい街づくりに貢献しています。

 「起業した当時は、『ゴミ拾いSNSなんて儲からない』とよく言われました(笑)。現在は400以上の団体がピリカを利用し、売り上げは8年で70倍を達成。自治体では清掃活動の可視化、企業では社会貢献活動のPRと、様々な目的で活用してもらっています」

 しかし、小嶌さんはゴミ問題の解決にはまだまだ程遠いと語ります。

 「海にプラスチックが流出する原因は、ポイ捨てだけではありません。今最も深刻なものは人工芝です。プラスチック性の人工芝はミリ単位の小さなものであるため、雨で剥がれると下水処理場の穴をくぐって海に排出されてしまい、深刻な問題となっています」

 そこで、小嶌さんはグラウンド外に排出されてしまった人工芝を回収する技術を研究すると共に、人工芝を化粧品ボトルなどに再利用するプロジェクトも発足しています。

 「私たちの会社だけでは、ゴミ問題という大きな課題を解決できません。もちろん株式会社として利益を出すことは大切にしていますし、資金調達の手段として上場も考えていますが、あくまで目的はこの大きな課題と向き合うことです。そのため、株主となっている方たちにも『ゴミ問題の解決が遠のくなら、上場はしない』という同意のもとで仲間になってもらっています。これからも企業や行政と組んでいき、一丸となって解決に取り組んでいきたいです」

 そんな小嶌さんの熱い発言で、今回のイベントは締めくくられました。

三菱地所が運営する「東京21cクラブ」は、ビジネス・アクセス共に利便性の高い東京駅前・新丸の内ビルに拠点を構え、国内外の先端スタートアップや大企業、その他様々なプロフェッショナル約600名が集うオープンイノベーションに特化した起業家支援コミュニティです。オンラインを含むイベントやセミナーなどを通じて、ミートアップなどの企業同士の交流の場を提供し、新規事業開発支援を行っています。

【CONNECT in 丸の内】では、三菱地所が運営する国内外のスタートアップとそのサポーター約600名が集う起業家支援コミュニティ「東京21cクラブ」による、イノベーション創出支援を目的とした活動の一部をご紹介します! アーカイブはこちら

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