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GATARIが見据える、デジタルとリアルの境界がない社会「五感すべてを“拡張”できるモノを」 (2/3ページ)

TOMORUBA
TOMORUBA

ーーARグラスが実用化されるまではまだ時間がかかるのですね。聴覚にフォーカスした御社のサービスはどのようなものでしょうか。

竹下氏:

私たちはMR時代を見据えてまず「デジタルリアリティ×聴覚」を実現した「Auris(オーリス)」(https://auris-ar.com/)というサービスを展開しています。ノーコードでデジタルの音声情報を空間に配置・保存できる世界初のサービスです。構想から約2年かけて開発し、昨年9月にパートナー向けにクローズドリリースしました。

現実世界に配置した音声データを、スマホカメラで読み取り再生できるため、ビーコンなどの設置が必要ありません。博物館や観光サービス、商業施設などで利用ニーズが高まっています。

ーー御社の強みを教えてください。

竹下氏:

私たちの強みは自社開発したオーサリングツールとMRの知見です。通常、音声コンテンツを作る際にはクリエイターやエンジニアがチームを組んで作るもの。しかし、私たちのオーサリングツールはノーコードでコンテンツを作れるので、エンジニアがいなくてもコンテンツができます。

実際に、私たちのチームもサウンドデザイナーが一人でコンテンツを作ることもあります。

また、MRはテクノロジーの側面が強く見えがちですが、実際にはテクノロジーをいかに感じさせないかが大事で、人と現実への理解が非常に重要です。ある空間があったときに、その空間の光は時間によってどのように変化するのか、音環境はどうなっているか、残響はどの程度あるか、人はそこを訪れたときにどこに注目してどういう視線の動きをするのか、そこでどういう音を聞くとどういう気持ちになってどのような動きをするのか。そうしたことを観察したり想像することによってデジタルとリアルがシームレスに融け合う自然な体験を作ることができます。

GATARIの人的リソースを支えるVRインカレ「UT-virtual」

ーーARの技術やサウンド・デザイナーなど、専門的な人材を採用できていますが、採用の強みについても聞かせてください。

竹下氏:

採用の強みとなっているのが、私が起業してから作った東京大学を拠点とした日本最大のVRのインカレ学生コミュニティ「UT-virtual」です。

元々は会社とは関係なく、「VR領域に素養を持った優秀な若い世代を様々な業界に送り出して行く仕組みを作ることが、世界に先駆けて日本でVRが普及する素地になり、また学生によってビジネスとしてはできない色々な研究・創作が行われてVRの様々な可能性が見出されて行くことがその普及を加速する」という想いから、作った団体でした。

起業当初の2016年はまだVRの機材も揃えようと思えば最低20~30万円はかかり、広い場所も必要だったので若い世代は興味がありながらもなかなか触ることができないという状況でした。そこで人とお金と場所を一箇所に集め、様々なバックグラウンドを持った学生が日々部室に集まってVRに触れたり開発したりできる環境を整えて作ったのが「UT-virtual」です。

様々なご協力もあって運営は順調に引き継がれ、現在4代目の代表で会費は年間1万円ながらも120名を超える部員が在籍しています。北は北海道、南は沖縄まで日本全国の大学からVR/ARへ興味を持って取り組むメンバーが集まる熱量の高い団体となりました。

ーーインカレの卒業生がGATARIに入社してくるのですね。

竹下氏:

そうですね。お陰で現在16人いるメンバーはすべてリファラル採用で、外部サービスを使ったことはありません。サウンド・デザイナーも、UT-virtualに在籍していた音響の研究をしているインカレのメンバーから紹介してもらい参加が決まりました。未開拓の新しい可能性に挑戦できることが魅力になっており、感度の高いメンバーが集まっています。

ーーインカレのメンバーは優秀なのでしょうか。

竹下氏:

優秀ですね。東京大学先端科学技術研究センター教授の稲見先生に顧問をしていただいており、様々なアドバイスをもらっています。最近ではコロナの影響で中止となっていた受験生向けの東大オープンキャンパスをバーチャル空間上で実施する「バーチャル東大」のシステムを創ったUT-virtualのチームが東京大学総長賞の大賞を受賞しています。

ーーチームのマネジメントで意識していることがあれば教えてください。

まだ小さな組織なので、各部署でトップがプレイングマネージャーをしています。現場のプレーヤーがトップをしているので、個人の負担は大きくなりますが、スピードを持って現実的で最適な意思決定ができます。

また、オーサリングツールによってクリエーターだけでコンテンツが作れてしまうため、エンジニア組織とプロダクト組織が別れがちです。プロダクトチームのイベントにもエンジニアに参加してもらうなど、できるだけチームとしてお互いの目線や課題感を合わせて一体感が作れるよう意識しています。

共創の成功に必要なのは「相手の利益を追求する意識」

ーー昨年から鹿島建設、東京メトロと複数のアクセラに採択されていますが、アクセラに参加する理由を聞かせてください。

竹下氏:

私たちの技術はリアルな空間と紐付いたデジタル空間を作ること。そのため、リアルの空間をもっている会社と組んでいくことが必要不可欠です。サービスをリリースした昨年の9月から、リアルの空間を持っている会社、デジタル空間で配信できるコンテンツを持っている会社と積極的にオープンイノベーションを行ってきました。

鹿島建設さん、東京メトロさんの他に、仙台市のアクセラレーターでも採択されて楽天野球団さんとの共創も進めています。まだリリースしていないプロジェクトも多数進行中です。

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