STARTUP STORY

水道いらずの水インフラで被災地を救うWOTA 次の使命は、後継者が不足する水処理業界のDX (1/3ページ)

TOMORUBA
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 スタートアップ起業家たちの“リアル”に迫るシリーズ企画「STARTUP STORY」。今回登場してもらうのは、水道のない場所での水利用を可能にする自律分散型水処理システムを開発・提供するWOTA株式会社の前田瑶介氏だ。

 WOTAが開発したプロダクト「WOTA BOX」は、電源一つで手洗いやシャワーを可能にするため、被災地など水が利用できない環境で大いに活躍している。

 小学校から研究を始めたという前田氏。日本は研究者あがりの起業家が少ないと言われるが、いかにしてスタートアップ経営者になったのだろうか。研究開発スタートアップのリアルと、世界のインフラを視野に入れた今後のビジョンを語ってもらった。

楽しむための研究から、大きな目的のための研究へシフト

ーー研究に興味を持ったのはいつごろからでしょうか。

前田: 小学校1年生の時に生物の研究を始めて、それから10年は生物について研究をしていました。最初はカブトムシの研究をしていたのですが、スパイダーマンの影響で小学6年生から中学生にかけては、蜘蛛の糸の強度を測る研究をしていましたね。時にはインターネットを使って、大学教授にも話を聞きながら研究を進めていました。

中学時代には、その研究で科学の賞で日本一にもなりました。高校に入学してからは、一転して食用納豆から水処理に使われる成分を採取する研究に没頭します。その成分は人工的に合成することもできるのですが、食用の納豆から採取できれば、どこでも水処理が可能になると思ったのです。

ーー当時から社会のために研究したいという思いはあったのでしょうか。

前田: 当初はそんなに大それたミッションはなく、自分が楽しいから研究をしていましたね。しかし、高校の時に瀬戸内に浮かぶ豊島(てしま)に行ったことが、その後の人生を変える転機となりました。産業廃棄物が不法投棄により環境が破壊された豊島で、環境と経済の両立を考える合宿に参加したのです。

それまでは自分が楽しいという理由で研究をしてきたのですが、そのために一生をかけるのは違うと思うようになりました。もっと目的を持って、大きな課題を解決するための研究に人生をシフトチェンジしようと思ったのです。

ーー楽しむための研究と、大きな目的のための研究は何が違うのでしょうか。

前田: それまで行ってきた研究は、部分最適化されていました。例えば蜘蛛の糸の研究は新しい繊維の開発に役立ちますし、納豆の研究も水処理の問題に役立ちます。ただし、大きな課題を解決していくには、もっと社会全体を俯瞰しながら、都市のあり方を変えていかなければなりません。

これは私達と他の研究開発スタートアップとの違いとも言えます。研究開発スタートアップの中には「すごい研究シーズあるから、これを使ってビジネスにしよう」と始まっている企業も少なくありません。しかし、私達は大きな課題を解決するという目的があってそのために研究を続けています。同じ研究開発スタートアップでも、この2つではファイナンスも人の集め方も、価値の発揮の仕方も大きく違います。

東日本大震災で、水道インフラの「ブラックボックス」に違和感

ーー現在取り組んでいる水道インフラに課題を感じたきっかけについて教えて下さい。

前田: 私が大学の合格発表のために徳島から上京したのが、2011年3月10日でした。翌日に東日本大震災が起こり、東京全体が断水になったのです。しかし、誰に聞いてもなぜ断水しているのか、神田川の水が飲めるかどうか、洗濯に使えるかどうかも分からない状況でした。

私が育った徳島の田舎は、水道が通っていない地域もあり、湧き水をベースにとした配水システムが整備されています。そのため、蛇口を開けば湧き水が飲めますし、万が一断水してもポンプを掃除すれば解決します。つまり、自分たちで自分たちが使う水を管理できたのです。

そのような環境で育った私にとって、自分たちが口にする水にすら何も知らず過ごしている東京の人たちに違和感を覚えました。数日口にできないだけで命に関わる水が、どこからどのように運ばれているのか分からないなんて怖いですよね。その体験から水道インフラが「ブラックボックス化」してしまっている仕組みを解消しようという想いが芽生えました。

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