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水道いらずの水インフラで被災地を救うWOTA 次の使命は、後継者が不足する水処理業界のDX (2/3ページ)

TOMORUBA
TOMORUBA

ーー水道業界には具体的にどのような課題あるのでしょう。

前田: 水処理場や自治体の財政について調べてみると、今の水道事業は大きな赤字で、まったく投資回収ができていません。さらにこれから人口が減っていけば、コストを負担する人数が減るため、将来的にインフラの維持も難しくなっていきます。

加えて2030年代には、日本中の水道管を交換しなければいけないタイミングが訪れますが、それには100兆円以上の莫大なコストがかかります。人口減少が止まらない日本で、どのインフラに投資するのかは大きな選択ですし、もし水道管を交換するとなれば、そのコストをどのように捻出するのかも大きな課題です。

ーー大きな課題だと思いますが、解決策はあるのでしょうか。

前田: 水道事業が赤字になっているのは、水道が「線のインフラ」であるため、人口密度が低い地域では採算性が悪くなるからです。人口の数や密集度、自然条件等によって都市ガスからLPガスのように線ではなく「点のインフラ」を選べた方がいいのに、そうはなっていません。そのために水道事業が投資回収のしづらい財政構造になっているのです。

もしも水が「点のインフラ」になり、その地域に合わせた自立分散型の水処理事業があれば話は違います。今のように最新のテクノロジーを使うかどうかは分かりませんでしたが、当時から井戸のように、それぞれの地域で水が管理できる構想は考えていました。

「災害時も水の心配がいらない」 プロダクトに隠されたメッセージ

ーー大学ではどのようなことを学んでいたのか教えて下さい。

前田: 大学は建築学科なので、建築と都市のデザインなどを勉強していました。ただし、周りの学生たちが意匠的なことを学んでいたのに対し、私はシステムやエンジニアリングがいかに設計や意匠を変えるのかについて強く興味を惹かれていました。例えば、ビルの中で水処理が可能になれば水道管も必要なくなるので、建物の設計自体も変わりますよね。そのような研究をしながら、大手住設メーカーのIoT型システムの開発プロジェクトなどにも参加していました。

ーーどのような経緯で、WOTAでプロダクトの開発を始めたのでしょうか。

前田: 大学院を卒業した後はすぐに、大学の先輩が創業したWOTAが水の課題に取り組んでいたので参画することにしたのです。ただし、当時のWOTAは、ものづくりの戦略が必要なタイミングでした。そして、それは時間のかかるものづくりスタートアップにとってはとても重要なことです。

今のものづくりは、全ての仕様が決まらなければ、作り始めることもできません。「どんな目的で、どのように使うプロダクトを作るのか」という仕様と、「そのプロダクトによって得た技術やノウハウが、未来に具体的にどう繋がるのか」という戦略が必要なのです。

「技術的に実現可能か」「ユーザー体験として成立するのか」「マーケットが潜在的に存在するのか」この3つを検証できてはじめて、事業が成立するからです。また、事業と事業をうまく繋げていくことで水問題の解決を実現したいと考えています。そこで私は世界初の汎用性のある水処理自立制御システムの開発にチャレンジし、それをある程度開発できたことで、その後のプロダクト開発もスピーディーに進めるようになりました。

ーー被災地向けのプロダクトから開発していますが、どのような戦略によるのか教えて下さい。

前田: 単純にお金を稼ぐだけなら、他の商品企画もあったでしょう。例えばクルーザー専用のプロダクトの企画もありました。しかし、最初に災害対策向けのプロダクトを展開したのは、戦略というよりもメッセージを届けたかったからです。

私達のプロダクトが普及すれば、「災害が起きても水に困らない」というメッセージを自治体の方々が発信することができます。人間にとって一番大事なライフラインが、災害の時に止まっていては話になりません。災害時の水の心配を取り除くことで、大きな安心を感じてもらいたいと思ったのです。

加えて、私にとってサービスの原体験が災害だったことも大きく影響していますね。

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